送別会で、言わなかった言葉たち

松山での職場の送別会で、言わなかった言葉たちがありました。

というか、感動的な挨拶をしたスタッフのあとで、
ちょっと違うかな、と思って言わなかった言葉。


それは、ずっと母乳育児支援をしてきた私の哲学というか、
希望なので、、、
もしかしたら、このブログを読んでくれるスタッフも
いるかもしれないので、ここでこっそりと(*^^*)



もちろん、一番言いたかった「ありがとう」は、
ちゃんと告げることが出来ました。

哲学、と言うと難しい言葉ですね。


私は、どうやら独特のお産のとらえ方をしているようです。
自分としては、特に変わったこととは思わないのですが(*^_^*)。

お産というのは「安全に身二つにする」というのが、
一般の産科医療の目的であるかと思います。

でも、私の目にはいつも「安全に身二つにしたあと、
ゆるぎない絆で結ばれた親子のペアを生み出す」
ところまでがお産だと映っているのです。

それは、もしかすると医療というサービスから言うと、
踏み込みすぎの視点なのかもしれません。


生んだ親が、我が子が可愛くてあたりまえ、、、と、
普通は受け取られているようですが、
赤ちゃんの可愛さというのは、可愛さを感じるスイッチを
いれる経験が必要な父や母は少なくありません。

ちょっとした知識と技術とが必要なのに、
周りに赤ちゃんを見たこともなく、ぐにゃぐにゃで、
大人に比べると分かりにくい表情の赤ちゃんは、
親に求めるばかりに感じる人もいらっしゃるかもしれません。

親になった人の周りに応援してくれる人がいなかったり、
おっぱいをたっぷり飲んでそれ以外は寝ている、
可愛いペットのような天使な赤ちゃんを期待していたりするとき、
泣き続ける赤ちゃんに、責められているように感じたり、
自分の親としての能力に自信をもてなかったりする人もいます。

一方で、赤ちゃんとのつきあい方は大人とのつき合いとは
どうやらちょっと違うらしいと言う、あたりまえだけど、
目から鱗の出来事に気付いたお母さまたちは、
泣いても笑っても、親になっていく経験のなかで、
鮮やかに成長していけるのです。


そこの「ちょっと」を気付くきっかけを
誰かがヒントを与えたら、母親はとても変わる力を持っています。

もしかしたら、そのヒントを与えるのは、
産科医の仕事の外にあるのかもしれませんが、
保健師さんは、そのような仕事をする余裕がありません。
保育園の保育士さんが、赤ちゃんを見るようになる、
何ヶ月も先では少しばかり遅いタイミングです。

103歳まで生きられた加藤シヅヱさんは、
「親になるための学校がないのが問題ではないか」と
戦後早いうちからおっしゃっていたようですが、
今でもまだ、親になるための学校はありません。


だから、私が、思ったのが、
気付いた人は、出来ることだけでも伝えて行く必要があるのだ、
と言うことでした。


何度も書きますが、
それは産科医の責任の外にあるのかもしれません。
そうでなくても分娩を取り扱う医師も施設も減っています。
助産師さんたちの数も足りません。

そのなかで、「親になる」ことまで、産科の医療には
含めることは非現実的なのだろうと薄々は感じつつ、
それでもちょっとしたコツに気付いた人は、
せっかく気付いたのだから無視すべきではない。
という考えを捨てることが出来ないのが私でした。


隠そうとしても捨てることの出来ない思いに
辛抱強くつきあっていただけたことに心から、感謝いたします。


安全なお産で無事身二つになり、
幸せなおやことなって一ヶ月健診を終了できる。

そこから、逞しい子供の成長は始まると信じているのでした。

(たいていのお母さまは、そんなことは、
 お節介に言われなくても自分で気付けるものでもあるのですよね。
 実際は。
 だから、私ももう少しそっと支援して行けるようになれたら、
 と思っているんです。これでも。)





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おしらせ:
平成22年4月から活動拠点を松山市から
香川県高松市に移動しますm(_ _)m
同じ思いでお産を見守る助産師さんとの出会いも
あったらステキだなあ、と思っております。








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Commented by kao at 2010-04-20 23:15 x
こんばんは☆
昨年、先生にお世話になり無事出産に至りました。
娘も8カ月になります。
今でもまだまだおっぱいが大好きで離乳食よりも母乳ばかり飲んでいます。
香川に行かれたと聞きびっくりしました。
先生のお陰で母乳の大切さを教えてもらえました。
本当にありがとうございましたm(__)m
Commented by Dr-bewithyou at 2010-04-23 16:05
kaoさま>
しあわせな時間を過ごされているとのご報告、ありがとうございます。
そして、びっくりさせてごめんなさいね。
香川に来てしまいました。

母乳が大好きな赤ちゃんでは、カロリーはたいてい足りているので、
心配ないことが多いのですが、
赤ちゃんのからだの鉄や亜鉛はそろそろ不足し始めています。

だから、赤ちゃんにいろんな食べ物を触らせてあげてみましょうね。
その中で、赤ちゃんが、からだに必要なものに興味を
持って行くことが多いようです。

離乳食も、WHOなどでは、「補完食」と言う言葉を使い始めています。
おっぱいをやめる食事から、
おっぱいで足りないものをたす食事に、変わってきているのです。

フォローアップミルクの鉄は母乳の5倍入っていますが、
吸収率も五分の一です。なので、本当に鉄が必要ならば、
赤ちゃんがレバーとか納豆(詰まらないように工夫してくださいね)、
アサリのように鉄の多い食品を好む傾向があります。

その上で、おっぱい大好きでママに自由をおっぱいを貰えるのは、
とても幸せな時間なのだと、
そうやって楽しく生活して行ってくださいね。
Commented by メルシー at 2010-07-29 18:48 x
私は2歳の娘がいます。先生が以前いらっしゃった病院で、我が子をとりあげて頂き、その後乳腺炎でもお世話になりました。
そして、今お腹には9ヶ月のベビーがおります。
病院を変わられたことをしり、かなりショックをうけました。先生のお話は、新米ママだった私は為になることでしたし。納得できたし。今回のお話もよくわかります。私は娘に、母親にしてもらったきがしています。
次のベビーにも、また違った形で母親にしてもらうのでは。。と。
もちろん母乳で頑張りたいと望んでおります。
Commented by Dr-bewithyou at 2010-07-29 22:29
メルシーさま>
コメントをありがとうございました。そして、
ガッカリさせてごめんなさいねm(_ _)m

>私は娘に、母親にしてもらったきがしています
親子の関わり、と言うのは、こういうやり取りのなかで、
育って行くのだと私は思っていますが、
メルシーさまの、赤ちゃんとの生活の豊かさが伝わってきました。

家庭の事情で、高松に転勤しました。そのために、
お姉ちゃんと赤ちゃんとママと、目を合わせて、
お話できないことととても残念に思っております。

新しい(もしかしたらタンデム授乳になるかもしれない?)
おっぱいライフに、楽しい時間が沢山訪れますように(*^^*)
by Dr-bewithyou | 2010-04-06 21:45 | 応援メッセージ:支援スタッフ | Comments(4)

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