なぜ母乳育児に厳しい食事制限がつきまとうか考えてみる

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ママが食べる物と、母乳育児の関係は、
知られているようで知られていませんよね。

例えばママが口にした物が赤ちゃんに影響するから、
気をつけて薬を使うものだとしても、
「授乳中だから薬は処方しません」
と病院で言われることは度々。

産院のウェブサイトに
「母乳がよく出るように和食中心のお食事を提供します」
と書かれていることも珍しくありません。

また、専門家もママも
「乳腺炎にならないように、ケーキや焼き肉は控えましょう」
と、授乳婦の脂肪摂取を極端に制限するのも
しばしば耳にします。


薬に関して最近は飲める薬がある事が理解されてきたと
http://smilehug.exblog.jp/17462797/
の記事などに書いてきました。


さて、脂肪制限は本当に必要なのでしょうか。
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ケーキなんか見せないで~~~と、言わずにお付き合いください


昔、私も乳腺炎の患者さんが来院したら、
「ケーキとか食べなかった?」
「焼き肉パーティーしなかった?」
「お餅、いくつ食べましたか?」
と、食べ物だけに焦点を絞って犯人捜しをしていました。
そして、
「じゃあ、マッサージしておきましょうね」
と、助産師さんの出番となっていました。
・・・それを素晴らしいチームワークだと満足していました。

ほとんどの人が2-3回のマッサージと、
ケーキを我慢することで乳腺炎は治っていました。
、、、というか、治ったと思っていましたから。

しかもとても感謝されていました。

乳腺炎になったお母さま方は痛みと熱とで
本当に辛そうです。
しかも、赤ちゃんの食事である母乳の出方も変わる人もいて、
赤ちゃんへの心配も加わります。

マッサージのタイミングが遅れて、
乳房膿瘍になったり、
敗血症(血液の中に細菌が認められた重症感染症)になったり、と、
医学的にも深刻な状態になった患者さんの記憶もあります。

防げるならば防ぎたい病気ですが、
乳腺炎にかかるママはくり返しかかる人が多いです。

当時、だから、ついつい乳腺炎の犯人捜しに
力が入りすぎていた物です。

今のように乳腺炎の原因を知らなかった事と、
ケーキを控えてもらう事で乳腺炎の再診までの期間が延びている
。。。ような印象とが相まって、
今思うと、本当に申し訳ない話ですが、
食事制限に力を入れていた物です。



その私も、今では食事制限はしていません。

もっともケーキを5個食べて晩御飯を抜くとか、
ステーキでお腹いっぱいになったからお野菜とご飯は抜き!
というような極端を勧めることはしませんが。


乳腺炎になる仕組みを知ったからです。
(↓にママ向けの簡単にまとめた説明をリンクしてます)

そして、しつこく乳腺炎になるまでになにがあったかを、
おっぱいが痛い、といって受診したママたちに
問診票を使って尋ねまくって、
授乳間隔や授乳姿勢の問題が必ずいっしょに起きていることに
納得したからです。

ママたちは、乳腺炎の原因にまず
「ケーキ」「お正月で餅ばかり食べていた」
「お姑さんのコテコテの洋食」と書きます。
その時に、授乳する椅子は変わらなかったか、
授乳と授乳との間の時間に変わりは無かったか、
離乳食を急に増やしていないか、と、
その他の理由も確認したところ、
ケーキや脂肪分の多い食事以外に全く理由のないママを
見つけることが出来ませんでした。
(H22の日本母乳哺育学会にて発表)


マッサージも、色々事情もあったのですが中止しました。

腕に自信のある助産師さんは、とても残念そうで
申し訳なかったのですが、、、、
赤ちゃんが一回一回の授乳で飲みとれるように、
授乳姿勢やタイミングに改善点が無いかを、
ママそれぞれと検討して、
赤ちゃんの授乳そのものが、マッサージと同等であることを
説明してママにも納得してもらいました。

授乳方法をちょっと工夫すると、
外来診察のその場で、痛みやしこりが解消することが
ほとんどだったため、
マッサージをやめたからといって恐れていた、
重症化も全くありませんでした。


ケーキがほしいなら一個とか二個とか、
ご飯を食べられる数にしてね。
ハンバーグが好きならそれでいいから、
食事の内容のバランスは気をつけてね。
その代わりに、授乳の方法を工夫するのに慣れるまでは、
お出かけやお客さんは極力減らして、
授乳の時の赤ちゃんや、
自分の抱き方に神経を集中してみてね。

体を休めて、おっぱいは働かせて(授乳回数↑)ね。

、、、これが、今の私が乳腺炎のママにかける言葉です。



鼻高々に「ほら、あなた、ケーキを食べたから、
こんなに辛い思いをしているのよ」と、
指導していた時は、かっこ良さ気でしたが、
医学的な根拠を知らずに単に威張っていただけなのを
恥ずかしく思います。

今は、時に、赤ちゃんが「イヤなの!」と抵抗したりして、
一回で痛みの解決に繋がらないかっこ悪いとも言える
診察で終わらざるを得ないこともありますが、
ママに解決の方法を伝えておくことで、
ご自宅に帰ってから、親子が工夫できることで、
繰り返して乳腺炎を起こすことがグッと減りました。

格好良くないけど、、結果的に、
乳腺炎の対処方法をママと赤ちゃんとが身につけて、
再発を防ぐなら、
これこそが医学的な対応といえるのだろう、と、
食事制限のワナから私も逃れることが出来ました。


乳腺炎で検索をかけると、
脂肪制限&マッサージばかりが引っかかってきます。

食は生きるための根っこを支えるものです。
その食に対して極端な制限を必要とするような病態が、
当たり前に子どもを養育する場面に欠かせない事は
どこかおかしいのではないでしょうか。
そういうあたりまえな感覚を、
私たち専門家から取り戻していけるような
社会になるために、なにができるのでしょう。

考え続けていきたいと思います。



今までに書いた、乳腺炎の関連記事
脂肪が母乳の成分になる仕組み
 → http://smilehug.exblog.jp/16706596/
日本母乳哺育学会で乳腺炎をマッサージなしで対応した200例についての発表
 → http://smilehug.exblog.jp/11983979/
乳腺炎の仕組み(母親向け)
 → http://smilehug.exblog.jp/15546053/
医師向けの乳腺炎に関する医学的情報
 → http://smilehug.exblog.jp/15969910/




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about me:
平成24年4月からは、小豆島で、分娩に関わっていきます。
ハグブログに共感する思いでお産を見守る助産師さんとの出会いも
あったらステキだなあ、と思っております。

目標は「母乳育児支援を学ぶ会in四国第2回」。
まだまだ、道のりは遠いですが一緒に実現してくれる
仲間を募集しています






Commented by しろたん at 2013-01-06 22:36 x
ご無沙汰しております。
乳腺炎と食事制限のように、切っても切り離せないものって色々ありますね。医療者もマッサージをしたがるし、お母さんたちもマッサージをしてほしがる。この辺りも気になります。
Commented by Dr-bewithyou at 2013-01-07 14:47
しろたんさま>
マッサージは、オキシトシン効果で、
する方もされる方も、良い気持ちになれる部分はあるでしょうね。

受診した方に、
「こう言う理由で、私はマッサージはしないのだけど、
 それでもよろしいですか?」と、乳腺炎の病態を説明して、
ポジショニングとラッチオンとの説明をすると、
「それでもマッサージを!」と粘る患者さまは
ほとんどいらっしゃらないです。

またポジショニングとラッチオンとで
多くのトラブルが解決するというと、
助産師の卵ちゃんは「これならできる」と嬉しそうにします。

そうなると
上手なマッサージ(効果的な排乳ともいえるけど)の施術者は、
ポジショニングとラッチオンの評価をする専門家となっていくと、
実際の手技を進化させる機会を失うことになりますよね。それを
どう捉えるか、という部分は、私の中で今、保留項目です。
Commented by S.Y at 2013-01-08 16:45 x
ご無沙汰しております。
今週末我が子が退院!の予定が、2週間延期になり、報告も遅れておりましたm(_ _)m
血液中のリン濃度が低いそうで、原因が母乳か赤ちゃん側か不明ですが、まずは母乳のうち半分をミルクに切り替える、ミルクなら完全栄養食だから・・・のことでした。
親の都合ですが、乳腺炎を避けるためにも退院までには全部母乳でも大丈夫になってほしいです~

授乳できずに自分で3ヶ月乳搾りして分かりましたが、詰まるときは食べ物よりストレスの方が影響大きいです。
食べ物も確かに多少出はよくなりますが、微々たるものです。
それ以上に、ストレスがあると射乳反射が起こりにくく、結果詰まる(うっ滞)感じです。
Commented by Dr-bewithyou at 2013-01-08 21:30
S.Yさま>
Sなのですね。Jだと思い込んでいました。

2週間、延期になったのにせよ、退院の話が出るようになったのですね。
>ミルクなら完全栄養食だから
、、、相変わらず、ミルクがメインの環境で苦労なさっているのですね。

三ヶ月という長い、母乳を搾ってきたS.Yさまの努力に
まず、拍手します(*^O^*)

私は、小児科には詳しくないのでリン濃度の低さが、
赤ちゃんの健康にどのような影響を与えるのかを、
説明出来なくて、ごめんなさいね。

そして、食べ物では詰まらない!という体験談をありがとうございます。
この記事は、ここのブログが始まって以来の、
最高の訪問者を引き寄せた記事です。
みなさん、上手くいった方も、「本当にあの食事でよかったのだろうか」
と、胸につかえていたようです。

退院が決まりましたら、是非、お知らせくださいね。
Commented by ちー at 2013-01-08 23:05 x
あけましておめでとうございます。
ロールケーキの生クリームに中ったらしく主人は食中毒、私は同時同症状ながら細菌感染はなく胃腸風邪、と共倒れしそうな年明けになりました。
というわけで、食事制限おかまいなしに食べておりますが、母乳外来受診は一度だけでした。
産院の「ケーキもステーキも食べちゃダメとは言わない、味を楽しんでも食バランスは乱さないこと」を守っているつもりです。
>その食に対して極端な制限を必要とするような病態が、
>当たり前に子どもを養育する場面に欠かせない事はどこかおかしいのではないでしょうか。
本当に本当にそう思います。
健康番組でいろんな食物が紹介されますがぜんぶ取り入れるとなると結局のところ「バランスよく、たくさんの食材、に行きつくだけじゃん」と母は申します。
同じことなんだろうなぁと感じます。
ただ、お餅だけはちょっと張りが強い気がしています。切り餅1個でご飯茶わん1杯分だそうですね。
普段ご飯1杯でも、お餅になると2つ3つ食べたいものなので、バランス面で見ると実は食べ過ぎなんでしょうね~
Commented by Dr-bewithyou at 2013-01-09 15:07
ちーさま>
今年もよろしくお願いします。

お正月早々、家族皆さん、大変だったのですね。
美味しく(当たらないもの!藻、大切ですね(^_-)-☆)食べて、
極端な食生活にならないように気をつけるのは、
日々の積み重ねですね。

お餅は小さい容積にエネルギーがギュッと詰まっているので、
食べ過ぎになりやすい食事の一つでしょうね。
トラブルが起きないなら、問題なさそうです。
でも、もしおっぱいが痛くなるようなことがあるならば、
食べ過ぎて苦しくて、赤ちゃんとの密着具合に、
スキマが出来ていないかも、気をつけて観察してみて、、、
そして、どうだったのか教えてくださいね(ё_ё)
Commented by ちー at 2013-01-09 21:13 x
先生、こちらこそよろしくお願いします。
なんとか平常営業に戻っております(笑)

外出先で集中して飲まず気がついたら片乳だけ6時間以上飲んでくれてない!?事態なときも、
お餅で張ったときでも、同じ対処でクリアしました♪
1.先生のおっしゃる通り、密着度と肩の位置を見直す(肩=胸中、すごく便利な目安です)
2.痛みのある側を先に少し短めに飲ませて、おかわりでおなかいっぱい(次回は逆からですが痛みの残り具合で加減)
3.痛い箇所を外側から平らにそーっと押しながら飲ませる(圧迫授乳は助産師さんに手ほどきいただきました)
4.いつもの授乳間隔マイナス30分でおっぱい訪問販売を最低2回
軌道に乗ってからは、このマイルールで母乳外来無縁です。
この年始やっぱりお餅は1個じゃ足りない、お節も欲張って、若干痛みましたが半日で解消しましたよ☆
いや、過信は禁物、過信は禁物(南無)
Commented by ちー at 2013-01-09 21:56 x
ちがーうっ
2.痛みのない側を先に、です。
先に飲む側のほうが強く吸うようで、痛い方を先にしちゃうと...抑えるつもりが量産体制!でシャレになりません(o_ _)o
Commented by Dr-bewithyou at 2013-01-11 13:19
ちーさま>
一般的には「痛い方を先に」と、言いますが、
ちーさまの場合、痛くない方から飲んだ方が楽だったのですね。

↑の工夫のフルコース、素晴らしいです。
自己管理ができるのは、自信にも繋がりそうです。

母乳外来のお世話にならずに済む知恵に拍手します(*^O^*)
Commented by 亜衣 at 2013-02-27 08:23 x
有名な母乳マッサージの助産師さん。
病院と違って痛くない!\(^o^)/
でも、ものすごい食事制限を言われ、ストレスになっていました。
煮物のお肉も食べたらダメって!!
食欲もわかなくなります。
ラッチオンの方法を見つけて、驚き!!
赤ちゃんが痛みを取り除いてくれるんですもの!
あと、キャベツも活用してます。(笑)
私のおっぱいは出すぎるようで、我が子も途中でむせこむほど(笑)
2300gで産まれたのに1ヶ月で1kgも体重が増えてしまいました。
マッサージで絞ってもらうと、そのときは良いのですが、結局また赤ちゃんが余らしてしまうほどの量が次の授乳で作られてしまうと思います。
そしたら、またお乳がたまってマッサージに行ったら食事のことを厳しく言われて…
3日に1回それの繰り返しなので、疲れました。
授乳で工夫して、なるべく行かなくて済むようになりたいです。
Commented by Dr-bewithyou at 2013-02-27 16:46
亜衣さま>
マッサージと食事制限の指示の感想をありがとうございます。

母乳は出した分だけ作られるので、
お気づきのように、マッサージで搾ってもらうことで、
余計に作られる量が増えることは充分,あり得ると思います。

LAYLAちゃんの抱き方、くわえ方の写真と、
ご自身の授乳の姿勢とをじっと見較べて、改善点が、
見つかると,助かりますよね。

母乳が沢山出る人は、案外、痛みなどのトラブルに出会うものです。
そんな時の対応の1つの対応法を示しています。
1つのヒントになるかもしれません。
http://smilehug.exblog.jp/3864201/

そして、キャベツ!
私も,昔は形がいいのでよくお勧めしていました。
でも、今お勧めしていないのは↓のような情報も有るからなのです。
よろしかったら参考になさってみてくださいね。
http://smilehug.exblog.jp/9587000/
Commented by さき at 2014-02-03 20:27 x
度重なる乳腺炎を経験して、このブログにたどり着きました。これから姿勢に気をつけて授乳してみます。
マッサージを受けたところからのアドバイスで、あなたはおっぱいがよく出るから夜ご飯は極力控えめに&質素にしないと朝に詰まるといわれました。
夜7時くらいに質素なご飯のみだと、朝ごはんまでの3回ほどの授乳でお腹ペコペコです。なおかつ、水分もとりすぎるとおっぱいが作られるから控えてと。
ストレスたまりますし、体重もガクンとへりました。
食事制限をしていない先生からみて、上記のアドバイスはどう感じますか?
やはり夜はおっぱいはたくさん作られるのですか?
Commented by Dr-bewithyou at 2014-02-04 20:46
さきさま>
コメントをありがとうございます。

乳腺炎は一度かかっても辛いのに繰り返すと辛いですよね。
それでも頑張って空腹やのどの渇きも我慢したほうが良いと信じて
授乳を続けていらっしゃったのですね。

支援してくれた方は、楽になるようにということで、
アドバイスしてくれたのは理解出来ても、
、、、ひょっとしたらそれは正しくない情報なのではないかと、
お感じになる事もあったのですね。


赤ちゃんの飲み方や、その時の抱き方などを工夫してみて、
乳腺炎の対応ができるようになったならば、
その状態で、食べたいだけ晩ご飯を食べてご自身で確認してみるのが
一番、納得しやすいかもしれないと私は思います。

ブログの情報で授乳姿勢のコツを掴んだとき、赤ちゃんの成長に
ともなって、姿勢を微調節することを気をつけて行くなら、
その後の乳腺炎は「なりかけ」の時点で、やり過ごせている方が
沢山いらっしゃいます。

そして、身体は案外と大らかなので食事の変化で、急に身体を壊すことは
まずないと思います。
欲しいほど食べて、乳腺炎が再発したなら、
他に問題点がないか、再度検討してみることも出来ますから(^^)v
Commented by 麻帆 at 2014-02-13 20:56 x
お邪魔します。楽しく読ませてもらいました。また訪問します。ありがとうございました。
Commented by 食の専門家? at 2014-04-11 08:05 x
こんにちは。大変勉強になります。私も極端すぎる食事をされている方は別として厳しい制限を強いることは言いたくないし、だめなら次を考えましょう!と思います・・・また勉強させてください!
Commented by Dr-bewithyou at 2014-04-11 16:25
食の専門家?さま>
コメントをありがとうございます。
by Dr-bewithyou | 2013-01-06 10:31 | 問題発生 | Comments(16)

赤ちゃんとのつきあい方の情報メモ。母乳育児(おっぱいライフ)の応援をしている産科医 戸田千のブログです♪ 下方の「ブログの説明」に利用上の注意もありますので必ずご覧になってください。


by Dr-bewithyou
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