母乳が作られる仕組み

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授乳中の母親が作る事の出来る母乳の量は
どのように決まっているのでしょう。


簡単に表現するならば、
母乳は「乳房を空っぽにすると、その分が作られる」
という仕組みに沿って作られます。




それで、簡単な説明はおわりなのですが、
詳しく解説すると以下のような仕組みがあります。
乳汁分泌の場面で働いているのが「乳汁産生抑制因子(FIL)」という
「もう、作らなくてもいいよ、タンパク質」が
母乳の中にあって母乳生産のブレーキの働きをしています。

このFILを乳房の腺房腔:せんぼうくう(つまり母乳を作る袋)
から出す(つまり母乳が外に出る)ことは、
母乳を作るブレーキの働きを減らすことになるわけです。
母乳を出せば,ブレーキも一緒に外に出すことになります。

母乳生産のためのブレーキがゆるむと、
作る量が増える、という遠回しな形で母乳の量は
コントロールされているのです。


母乳がしっかり乳房の外に出る
(=FILが減る)ことで、
母乳を作るためのブレーキの働きが減ります。
すると、母乳をたくさん作ることができるようになります。

だから、双子や三つ子でも母乳だけで育てている
お母さんはたくさんいます。


また、医学的に必要な量より多すぎるミルクを足すことで、
乳房を空っぽにする回数が減ったり(間隔が空く)、
空っぽになら無いうちに
授乳時間が終わったり(一回につき飲む量が減る)して、
母乳が止まっていく人も少なくはありません。


次に、妊娠中からの経過に沿って
母乳が出る仕組みをおさらいします。
専門家向けの科学的な解説は、
母乳育児と栄養制限の記事(先日、多くの訪問を頂いた記事です)
紹介した乳腺炎に役立つ資料は乳腺炎のみならず
母乳育児支援のどのシーンにも役立つ資料がおおいので
http://smilehug.exblog.jp/15969910/
のテキストにお任せするとして、
今回は、グッと簡単にして説明してみます。
(簡単にし過ぎて、
 説明に問題があればコソッと教えてくださいませ(^^ゞ)



母乳を出すのに必要なものは、、、
◇母乳(母乳工場が生み出す製品)
◇乳腺(母乳製造工場)
◇乳管(母乳、輸送通路)
◇プロラクチンやオキシトシンなどのホルモン
 (母乳産生工場の管理職)
◇赤ちゃん(消費者。多くの場合、自分で乳汁を飲む。
 飲まないときは搾って飲む事も有る)
◇母親(母乳工場の敷地・設備であり、
母乳生産工場の社長でもある)


生産量を増やすには、、、
◇母親→授乳回数を増やしたり、痛くないように授乳したりする
◇乳腺→妊娠初期から発育し始める
    妊娠16週くらいから生後2日めにかけて
    乳汁を作り始める。
◇乳管→適切なポジショニングとラッチオン(抱き方とくわえ方)で
    母乳が通るのを邪魔しないように工夫する。
    (リンク先はいつものLAYLAちゃん)
◇ホルモン→プロラクチンは胎盤が出たときから一気に働き始める
    母乳発注のコールセンター。
    赤ちゃんの吸啜が発注となり、
    吸啜する度にプロラクチン濃度は上昇する。
    オキシトシン(実は多彩な能力を持つ)も
    吸啜により濃度があがり、
    作られた母乳を出荷する指示を出す。

 プロラクチンは授乳等の乳頭刺激で一過性に上昇するが、
直ぐに低下するのを繰り返す。
 刺激がないと一週間で、妊娠前の
母乳工場が働く前の値(量)になってしまう。

 プロラクチン受容体(発注窓口の担当者の数)は、
 産後すぐにプロラクチンが上昇する度に増えていく。
 夜間の授乳や、授乳回数を頻回にする事が、
 受注窓口の作業能力を後押しする。
 (だから夜の授乳回数が多いのは役に立つのです)

 このプロラクチンのコールセンターは、
仕事がないとすぐに休んでしまう部署です。
3時間以上あけることなく授乳する事が、
 特に産後すぐには担当者の数を確保するのに欠かせません。
工場のラインが安定すると人によっては
一日5-6回で育つ子も出てきます。
 
◇赤ちゃんのやる気は、深い吸啜や
 抱っこで落ち着かせることで発注量が増えます。

 普通の消費者と違って、ほとんどの事が反射や本能で
 コントロールされているので
 営業マン(もし、いたとして)の営業活動が
成果を上げるのは難しいです。
 ただし泣いてしまうと授乳が難しくなるので、
 ギャン泣きになる前に授乳の一連の行動を開始した方が
 うまくいくようです。
◇母親:社長の生産意欲は普通の会社でもそうですが、
    やる気があっても、スキルや人脈がないと、
    やる気が空回りしてしまいます。

    この社長は、消費者が大切で仕方ないので、
    少しでも沢山の母乳を出そうとしますが、、、
    時に必要以上の母乳をつくろうとすることもあります。。
    (母乳不足感と言う言葉で説明されるものです)

産後、2-3日から8日頃までは、、、、
◇プロラクチンからの指示が腺房細胞にとどき、
 母乳工場が徐々に軌道に乗り始めます。
 この頃はまだ母乳の材料と、生産量とのバランスが悪く、
 在庫を抱えてしまったり、材料が集まっても母乳にならず、
 おっぱいの不快な張りや、張ったために授乳が難しくなる
 ことをしばしば認めます。
 
 張ってしまう前に、赤ちゃんが飲んでくれる、、つまり 
 工場でつくられたものを素早く消費者に届けることで、
 この問題を解消していきます。

産後9日から飲まなくなるまで、、、、
◇このころにはコールセンターや管理職が頑張らなくても、
 現場の出荷係と消費者の赤ちゃんとの間で、
 顔パス状態で母乳が届けられるようになります。
 
 私たちはそれを「オートクリン・コントロール」と呼んでいます。
 ここからは先に書いたFILの出番です。

 母乳が長時間、腺房腔内に留まると、FILの濃度が上がり、
 母乳を作る量を減らす形でコントロールし始めるのです。

 


長くなりましたが、おわかりいただけたでしょうか。

なお、本日の参考文献は

母乳育児支援コミュニケーション術―お母さんも支援者も自信がつく (Breastfeeding for a medical pr) 

/ 南山堂

本郷寛子・新井基子・五十嵐祐子共著

を参照させていただきました。

(2017/6/6:文章の見直ししました。)


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about me:
平成24年4月からは、小豆島で、分娩に関わっていきます。
ハグブログに共感する思いでお産を見守る助産師さんとの出会いも
あったらステキだなあ、と思っております。

目標は「母乳育児支援を学ぶ会in四国第2回」。
まだまだ、道のりは遠いですが一緒に実現してくれる
仲間を募集しています






Commented at 2013-01-16 11:40 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2013-01-16 11:52 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by Dr-bewithyou at 2013-01-16 21:40
2013-01-16 11:40 鍵コメさま>
当ブログの記事が、鍵コメさまの気持ちを楽にするお手伝いをした
とのコメントをありがとうございます。

赤ちゃんのために、母乳をあげようと一生懸命だったのに、
悲しくて涙が出ることも一度ならずあったのですね。

せっかく赤ちゃんと暮らし始めたのに、
「こんなはずじゃない」と、すっきり出来ない思いもあったでしょうね。

痛くても、赤ちゃんにおっぱいをあげ続けようと思ったのは
すばらしい事ですね。
この頑張りは、しっかり赤ちゃんにとっての宝物になっています。
と、赤ちゃんの代わりに、言わせていただきます(*^O^*)

最初の頃は
母乳が出ていても(しこりができるくらいだから出ています!)
思い通りに口に入らないことも珍しくないです。

痛くないように、そして、笑顔でいられるように工夫すると
オキシトシンが沢山出て、その分、
沢山のおっぱいを赤ちゃんに届けてくれます。

頑張り屋さんのお母さんが、赤ちゃんとの生活をそんなふうに
1日も早く楽しむ余裕がうまれることを願っています。
Commented by えまえま at 2013-01-26 13:43 x
先日はコメントを頂いてありがとうございました。今では楽しく母乳育児ができている気がしています。気になることがあって先生のブログで探すのですが見つけることができないので教えてください。
最近乳首を咥え少したつと、吐きそうで吐かない、おぇっとした症状を良くします、飲みすぎなのでしょうか?外すと泣いてしまうので嗚咽が収まってから飲ませると必死になってまた飲み始めます。こんな日が続き本日生理が来ました。産後2ヶ月での生理ははやいですか?母乳の味など何か悪い影響があったりするのでしょうか?母乳は生理が遅いというのも聞いたことがありますが迷信なんでしょうか?質問ばかりですがお時間あるときに教えてください♪
Commented by Dr-bewithyou at 2013-01-27 08:11
えまえまさま>
赤ちゃんが授乳中にイヤそうな苦しそうな様子を見せるのが、
それまでにはなかった原因によるのではないか、と考えてみたのですね。

で、月経が始まったので,母乳の味が変わっているように感じられた
と言うご質問なのですね。

まず、月経は私が経験した一番早い人は、一か月検診の1-2週間後の
お母様を診たことがあります。授乳中は月経が来ない人が多いですが、
早く開始する人もいらっしゃいます。ただ、出血量がいつもと違うなら、
一度、産婦人科受診をお勧めします。
月経で母乳の味が変わるかどうかは寡聞にして分かりませんが、
変わったとしても突然にイヤそうな顔になるほど
急に変化はしないように思われます。

射乳反射でノドにおっぱいが当たってもは来そうな顔になるし、
それならば、えまえまさまの対応で乗り切れると思います^^

↓に急に授乳中に赤ちゃんが怒ったときの事情を考えてみた記事を
投稿しています。もうお読みになっているかもしれないし、
参考になるかどうかは分かりませんが、URLを載せておきますね( ^o^)ノ
http://smilehug.exblog.jp/12872011/
Commented by えまえま at 2013-02-01 16:45 x
お忙しい中お返事ありがとうございます。
張付されていたリンクとても参考になりました。
あれから、おえっとすることもなく飲んでくれるようになりました。

昨日できてないことが今日出来たりまた出来なくなったり、ほんと育児って試行錯誤ですね・・。まだまだママになって70日。
娘とゆっくり成長できればと思っています。
先生のブログは私の元気になれる源です。
おっぱいがしこりもなくなり、白斑の出来なくなりほんと良くなって、周りに勧めようと食べ物じゃないて言っても聞き流されるので、これが皆に早く伝わって少しでも色んなママさんが母乳で悩まなくていい社会になればと願っています。応援しています
また育児や母乳に悩んだときは相談に乗ってください
Commented by Dr-bewithyou at 2013-02-03 10:07
えまえまさま>
状況のご報告、ありがとうございます(*^o^*)

しこりと白斑とがなくなって、楽になれて本当によかったです。

授乳は、赤ちゃんとの二人三脚です。
上手くできるときばかりでなくて、
困ったり悩んだりしたことも、全てがお二人の物語になって、
この先の二人三脚を走り抜く勇気になっていくかと思います。

赤ちゃんと相談しながら、楽しい時間を増やしていけると良いですね。
(^-^)/
by Dr-bewithyou | 2013-01-14 17:39 | 応援メッセージ | Comments(7)

赤ちゃんとのつきあい方の情報メモ。母乳育児(おっぱいライフ)の応援をしている産科医 戸田千のブログです♪ 下方の「ブログの説明」に利用上の注意もありますので必ずご覧になってください。


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