なぜ産婦人科医が母乳育児に関わるか?(*^o^*)

twitterでご質問を頂いて初めて、
このブログになぜ産婦人科医である戸田が
母乳育児支援をしているかについて、
まとまった記事を書いた事はないと気付きました。
(記事の一部にはちょこちょこ書いているのですが)

とりとめなく、書いてみます。
誰の参考にも何にもならなさそうですから、
よくよく興味があるお時間のある方のみ、ご覧下さい。。。。(^◇^;)




産婦人科医が母乳育児に関わると言う事は、、、

産婦人科の学術集談会などで、母乳育児に関する演題を出すと、
「何この人?」という奇人変人を見るような視線が集まります。
今回もやっぱり場違いだ、場違いだと思いながら
7分の発表時間を過ごすことになります。

一緒に働いていた助産師さんに
「助産師の仕事を取る産科医」と言われることにもなります。

当然、産婦人科の教科書には支援についての項目はありませんから
厖大な外来や分娩の合間に、母乳育児支援をしていると
業務が滞ることもあるわけです。


母乳育児支援をしている方の中には、
ご自身が授乳に苦労したとか、
ご自身が赤ちゃんとの生活が楽しかったからという人も
少なくないですし、それは動機としてとても理解しやすいです。
ですが私は残念ながら産んだこともないですし
授乳したこともないです。
。。。ますますもって分かりにくい存在ですね。


つまり答えは理由も何も無くてただ単に
研修医時代の大部分を過ごした病院が、
現在はBFHであるような哺乳瓶のない病院だった。
だから、授乳や育児で困っている女性を見たら、
問題解決に手を差し伸べるのが当たり前だった。
それだけの事なのです(ё_ё)

分娩数が年間800-1100件ほどあったのと、
当直が三日に一度だったのとで、産まれるのを病院で
待機していることも多かったものです。
そうすると看護師詰め所の隣の授乳室に
定期的にやってくる産後のお母さん達と、
世間話をしたり授乳の仕方を教える(当時はハンズオンです)
助産師さんに授乳のコツを学ぶのも珍しくありませんでした。

でも、当時は、
そこの院長先生と助産師さんとが母乳育児支援をしていて、
私はそういう授乳室でのやりとりと一か月検診以外は、
ほぼ関わってはいませんでした。
なので母親が子どもを母乳で育てるというのは
私にとっては単に「当たり前な景色」のひとつなのでした。

退院後に、疲労困憊した母親は「出戻り母さん」つまり
今で言うところの、デイケアやショートステイの制度を利用する
事のできる病院でした。
なので赤ちゃんを預けてひたすら寝ている母親とか、
赤ちゃんが育っていることを確認して貰って、
授乳のちょっとしたコツを学び、
いわゆる「神の手」の助産師さんのマッサージをうけて、
元気を取り戻して、家に帰っていく母親も
沢山目の当たりにしていました。
(今は、マッサージを必須とは思わなくなりましたが
 当時はすごい技だと思って見ていました。)


その前の研修医の最初の最初のスタートを切ったのは大学病院でした。
そこでは赤ちゃんはベビー室にいたのですが、その時は、
無事産まれて良かったとしか思っていないから
赤ちゃんにも、その赤ちゃんとの生活に悩む母親にも
今の私と比べると驚くほど無関心でした。
つまり最初の赴任先で働いた7年(バイト時代も含む)で、
私の中の親子像が塗り替えられたと言う事でもあるのでしょう。


とは言え残念なことに当時は「頑張ればなんとかなる」
ミルクはなくてもいいという方向に偏りすぎては
いたかもしれません。
今はだからこそ、そういう頑張りを善とみる支援者の気持ちや
事情も分からないわけではないとも言えそうだと、
良いように受け取っています。



その次に転勤した病院では1人医長として勤務していました。

持っていたテキストらしい文献も
ラ・レーチェ・リーグの「だれでもできる母乳育児」と
日本母乳の会の「母乳育児Q&A」の2冊の本のみでした。

ある時、赤ちゃんの体重増加について、NICU勤務経験のある小児科医に
「俺は結果オーライだから、何を飲んで育とうが気にしないが、
 体重増加が思わしくないのは許さないからな」と
言われた事は1つの赤ちゃんの栄養に関する視点の転機になりました。
ミルクを足すか、搾母乳で間に合うか、スタッフで真剣に考えました。
週に2回しか来ない小児科医の「ミルクを足してね」も、
ここは大丈夫ね、と搾母乳で体重を増やしたこともあります。
増えなさそうな時はすっきりとドラッグストアに
ミルク缶を買いに行きました。

またBFHに挑戦したこともあります。
結果は敢えなく一次書類審査落ち。。。。ガッカリしました。
落ちた理由は赤ちゃんの盗難に対するセキュリティを改善すべきだとか、
公立病院の一人医長の施設である事とか、
パンフレットに哺乳瓶のイラストがある事とかだけでなくて、
95%の母乳率を低いという「??」な項目で審査に落ちました。

今、思い返してもBFHの審査に落ちたとしても
その病院では素晴らしい分娩・産褥ケアを提供していました。
詰め所の奥の休憩室にはよくお母さんが赤ちゃんを連れて
訪問していました。悩み相談だったり、時には、
「病院に行くなら外出しても家族がうるさくないから」と
看護師さんの休憩室でママ友に会っているという
カフェ利用のお母さんもいらっしゃったのも懐かしい思い出です。

今思うと、その審査に関係ない部分で、
お母さんに選択して貰える情報提供は出来てなかった事や、
傾聴は世間話のノリで行っていて、
「あなたを助けたい!」という善意に頼っていたことや、
ミルク使用がやや少なすぎたなどの反省は
今の支援に繋がっているので、振り返ると残念ですが、
通過点として必要だったのだろうと思うことにしています。


BFHを諦め、結局、病院の分娩機能停止に抗うことも出来ずに
転勤が決まったそのタイミングで
IBCLC(国際認定ラクテ-ション・コンサルタント)の存在を知りました。

施設としての活動からBFHI、、、イニシャティブつまり
母乳育児支援を普及するための活動なら個人でも出来ると
視線をシフトしたのです。


IBCLCの試験はとても大変で(これから受験する人を
脅すようで申し訳ないのですが、、、)、短期で必要な単位を取るために、
英語のYouTubeでの講義やテキストをしゃかりきになって対応しました。

今は日本語のテキストも充実していますし、
四国でも単位の出る学習会にようやく辿り着きました。
(8月8日(土) 宇多津のユープラザうたづにて会費4000円
上記リンク先にプログラムと、申込みサイト↓
の案内があります。3.5CERPs発行します。)
↑無事、盛況に終了しました。ありがとうございます。



2冊のテキストを手に持ち、授乳中は和食で!を推し進めている、
善意が先立つ支援が、エビデンスベーストな医学としての支援に
方向転換する機会になったというわけです。


その後、開業医さんで勤務するのに当たって、
お母さんがツラいのはダメ!という条件のなかで、
様々な発見や気づきがありました。

何がつらいか、母は何を求めているかを見つめ、
IBCLCの資格更新のための学習会参加で赤ちゃんについての
新しい知見を知ればブログの記事として書いていくなかで、
母乳かミルクかは、二の次となって、
いかに母親が楽しく赤ちゃんとつきあえるかということに
支援の目がシフトしていったように思います。

その時代付近に書いた文章が
という記事で2010年頃のものです。



何度も産婦人科医としては母乳育児支援は
不要な活動かもしれないと思い止めようと思いました。
その都度、お母さまたちの悲しみや喜びの言葉や視線によって
求められている事を知って、
この現場に 引き戻されて今に至っています。




そこに問題があると気づいた人がジャンルに関係なく動く。
動いているうちに、専門家の集団が
育っていくものなのかもしれません。

多分、産婦人科医は今は、
赤ちゃんを育てている母親が育児するのを支援するための職種でもなく、
小児科医は赤ちゃんの専門家であっても、
その母親を支援する専門家でもないのだと思います。


保健師さんや保育士さんが、育児に伴う苦労をめぐる
支援の専門家として活躍できそうに思うのですが、
その人達も多忙を極める生活をしています。

なので、今は、誰もが赤ちゃんと暮らす母親の育児支援の専門家でなく、
赤ちゃんと母親とをひとまとめにした健康の専門家でもないのでは
ないでしょうか。


気づいた人が出来る事をしていく。
そこで問題が明確になると解決への糸口が出来ることでしょう。
必要な仕組みが見えてくることでしょう。




更に、個人的に、、、、
母親と子どもの幸せを護って欲しいと人生の大先輩にも頼まれました。

そして、先日若くして亡くなった助産師である友人もまた、
親子の笑顔の為に出来ることをしたい、と言う人だったので、
その「守りたい」思いもまた受け取りました。

なので今の私は分娩も扱っていないですから
育児中のお母さん達に出会う機会も少ないですし、
一般的な産婦人科医の仕事ではなさそうだけれども、
誰かが、その仕事の専門家として育つまではお手伝いくらいは
させていただこうと思っております。


すっかり長文になってしまいました。
ここまでお付き合い下さってありがとうございます。


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about me: 坂出市立病院 産婦人科勤務 (外来のみ、H27年5月より)

四国でIBCLCに認定されるための継続教育単位の出る学習会をついに実現できます。
まだまだ皆さまのご協力が必要です。宜しくお願いします。

Commented by かおり at 2015-07-16 13:40 x
こんにちは。

先生の当たり前から始まった支援に何度も助けられた一人です。
産まれたらおっぱいがビュービュー出て、赤ちゃんもごくごくのんですやすや眠ると思っていた私。
想像をことごとくひっくり返してくれた我が子との付き合い方を教えてくれたのはまさに先生でした(笑)
飲まない時もあるよ、泣き止まない日もあるよ…と。
そんな時も優しく抱っこしてあげてと。
そうやって育てた娘はお母さん大好きっ子に育ちました(笑)
お母さんがいい、お母さんにして欲しい、お母さんじゃなきゃダメと…懇願される毎日です。
下が産まれたら少しうんざりする日もありますが、こんなに好いてくれる時間ってもうないだろうなーと思いながら過ごしてます。
時に怒ったりしても変わらないんです。
ある意味その真っ直ぐな愛情は私より上かなと。

授乳とかで困った時に携帯片手に、サイト内をさまよっていたときいつも思ってました。
先生はなんでこんなに一生懸命支援してくれるのかなって。
でも、それがあつたからこそ救われて笑顔になれたわけですが。

ありがとーございました。

とりとめなく書いてみました
Commented by Dr-bewithyou at 2015-07-30 21:23
かおりさま>
お返事が遅くなってごめんなさいね。

かおりさまの赤ちゃん(今ではお姉ちゃんですね(*^o^*))には、
私も沢山のことを学ばせていただきました。

彼女は、彼女として当時から一生懸命頑張って生きてて、
ママが大好きだと意思表示していたのでしょうね。

こちらこそ、沢山の勇気をありがとうございます。

まだまだ暑い日が続きます。
お互いにムリせずにゆっくり夏を楽しんでいきましょうね。
by Dr-bewithyou | 2015-07-08 17:24 | 応援メッセージ:支援スタッフ | Comments(2)

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