人種による授乳の割合の差が、健康の差に繋がるという記事の紹介

というtweetを見ました。ABM(世界母乳学会)のtweetで
あるブログの記事を紹介していたものの情報メモです。
情報メモなので、内容に不確かな部分がありましたら、
お知らせいただけましたら幸いです。
人種による授乳の割合の差が、健康の差に繋がるという記事の紹介_d0063558_21445152.png

ケンブリッジ大学の研究で
小児科学会雑誌Journal of Pediatrics  に投稿した
11/21/2016付けの記事の内容です。
上のポスターが示すのは、


ケンブリッジですからイギリスですが
研究はUSだから論文にされているアメリカ合衆国で育った人です。

母乳のみで6ヶ月まで、適切な補完食を使って
2歳以上まで授乳している割合は
白色人種>スペイン系>>黒色人種なのだそうです。

研究の対象は抄録 
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27837954
によると以下です。

STUDY DESIGN:

Using current literature on associations between breastfeeding and health outcomes for 8 pediatric and 5 maternal diseases, we used Monte Carlo simulations to evaluate 2 hypothetical cohorts of US women followed from age 15 to 70 years and their infants followed from birth to age 20 years. Accounting for differences in parity, maternal age, and birth weights by race/ethnicity, we examined disease outcomes and costs using 2012 breastfeeding rates by race/ethnicity and outcomes that would be expected if 90% of infants were breastfed according to recommendations for exclusive and continued breastfeeding duration.

 母乳育児と健康への健康について最近の論文を参照
 子どもの8疾患、母親の5疾患を比較検討
 モンテカルロシミュレーションという仮説検定を利用
 USと言う事でアメリカ合衆国ですね
 15歳から70歳が対象
 フォローは0歳から20歳まで
 人種、母親の年齢、出生時体重、民族性の差も合わせて検討
、、、で、最後の文章がよくわかりません。
2012年の結果から、9割のひとが母乳育児を適切に行えた場合は
病気にかかる割合も診療費も下げることが出来ることを
仮説として研究した、、、というところでしょうか。
(英語の得意な方、良ければ最後の文章の翻訳または意訳を
 教えてくださいませ)

その結果が上のポスターになります。


 耳の感染症      壊死性腸炎
 消化管の感染症    SIDS(乳幼児突然死症候群)
            小児期の死亡


Bが黒色人種、Hがスペイン系の人たちです。
数字は理想的な授乳が出来ない場合の
理想的な授乳が出来た場合に対する発症数です。

耳や消化管の感染症では母親が仕事を休む必要ができます。
それは低い収入で暮らす人にとっては母親の就労による収入が
ないと言うことに繋がるわけです。

以上、がケンブリッジ大学でのブログの記事の意訳です。
http://www.challiance.org/about/newsroom/study_shows_alarming_disparities_in_health_outcome_975.aspx





ここからは、私が感じている事です。

母乳をあげるとこういう利点があるとお話しすると
必ずのように「出ないお母さんが可哀想」というご意見が帰ってきます。

周産期医療は人手不足な領域で安全なお産に全力をかけていると、
母乳を出すようなケアは人資源的には非常に難しい施設もあります。

母乳で育てたいというお母さんが、
理由のない極端な栄養制限に出会ったり、
毎週のように乳房マッサージが必要だと思い込んでいたり、
赤ちゃんを母乳で育てるのはむずかしいと思ってしまってもおかしくない
一昔前の常識をまだ信じる人が多いです。

(残念なことに、減って来てはいますが、お母さんだけでなくて、
助産師さんや保健師さん、保育士さん、小児科医など医師も
母乳や母乳育児について大学で学んだ以上のことを
ご存じない方も少なくありません。)


母乳が出るのに出ない人になっている人が沢山います。
また、母乳が出る量が少ない又は少なく感じられても
ミルクでもどちらでもいいでしょう?という意見にかこまれて
「母乳をあげたい」と言いだす事にハードルを感じているお母さんも
いらっしゃいます。

でないお母さんが可哀想と本当に思っているならば、
でないお母さんを減らす事にもっと関心を持って欲しいとも
感じる事も度々あります。

もし、そうやって「出ないお母さんは可哀想」とおっしゃる方が
母乳育児の仕組みに関心を持っていただけると
多くの女性の身体は、母乳を作る量も赤ちゃんの口に入る量も
ゆっくりですがある程度は増えるように出来ているものなのです。

さらに、ミルクで赤ちゃんを育てる人へ、
「○○に気をつけるとより赤ちゃんの健康を守れます」
という信頼出来る情報を確立していくことにも
関心を持っていただけたら、と願っています。

母乳がないときにミルクがあるのはとても、助かるありがたい事です。
母乳が出るのにミルクをあげる事の影響は
この論文で研究されているようにまだまだ未知の事が沢山あります。


私は「赤ちゃんに母乳をあげたいと思う人が上げられる」
そういう環境を大切にしていきたいと思います。



寒くなりました。
どうか、お風邪など、惹かれないようご用心くださいね。


人種による授乳の割合の差が、健康の差に繋がるという記事の紹介_d0063558_16054613.jpg
スパイスとアーモンドの粉などの
残り物消化のためのクッキー。
粒々は全粒粉ではなくて顆粒の黒砂糖です。







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      母乳外来しています。

2015年、四国でIBCLCに認定されるための継続教育単位の出る学習会の第1回目は宇多津で無事に終了しました。
興味のある方で参加出来なかった皆さまのために、2回目も設定できるよう準備していきたいと思います。


by Dr-bewithyou | 2016-11-26 22:39 | 情報メモ | Comments(0)

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