ミルクを安全に作るために

母乳がスタンダードなのは間違いないけれども、ママの病気(風邪とかで容易にミルクを勧める内科の先生がいますがその多くは母乳を上げられる場合がほとんどなので、それ以外の病気の場合と考えてくださいね)や赤ちゃんに何らかの事情がある時に、昔は重湯や薄めた牛乳を上げていましたが、今は牛乳を原料に調整されたミルクを使用することができます。

薬と母乳についてここのブログでもタグ>「薬」
で、取り扱っています。


実は、乳製品は基本的に無菌ではありません。全てが有害な訳ではないのですがきちんと溶かして安全に保管することの大切さを改めて確認しましょう。WHOとFAOから出たものを厚生労働省で仮訳した乳児調製粉乳の安全な調乳、保存および安全な取り扱いに関するガイドライン(←にリンクしています)で
PIFを使用する者は、乳児用調製粉乳は滅菌された製品ではなく、重篤な疾病を招く可能性を持つ病原菌に汚染されている可能性がありうることを認識しておく必要がある。PIFの正しい調乳と取扱いによって疾病のリスクを減少させることができる。(PIF=PIF(powdered infant formula: 乳児用調製粉乳)
ということを目的として作成されたものです。




時間がいくらあっても足りない乳飲み子との生活の日々にミルクを作るのは回数も多く変化のない作業で、その時間に幸せを感じる時間として作っているのかどうかをまだ伺ったことはないので、ミルクを作ることを楽しいと思っている人がいましたら当てはまらないことを書くこととなるかもしれないのですが、ミルクが溶ける最低の温度で溶かして、ささっと人肌に冷まして赤ちゃんに飲ませたい場合がほとんどではないでしょうか。

ただすばやく溶かした無菌ではないミルクの中にもし、赤ちゃんに有害な
サカザキ菌
などが入っていても目で見ても舐めても見つけることはできないものなのです。それを安全なミルクにするためには、熱の力を借りることが必要です。一度沸騰させてから80℃に冷ましたお湯(温度計で計りましょう)でミルクを作るとサカザキ菌などは死滅するといわれています。そして、それを安全な温度に覚まして赤ちゃんに上げることになります。

このガイドラインには、たとえば電子レンジで調乳することは勧められないと書いています。熱湯になっている部分もあれば、温度が上がっていない部分もあるため殺菌能力にむらがある可能性があること、上のほうは極端に高温であるために赤ちゃんがやけどする恐れがあるからなのだからです。

また安全のために高温で溶かすことで失われる栄養素がないかと言うことも検討されていて、高温にすることで失われるのは主にビタミンCであろう、ということも書かれています。






混合栄養で母乳分泌を保ち続けることが難しいということ、そして、ミルクの安全性がこのように細かい注意で保つものであることを意識して、ミルクの併用をするかどうかは、その適応が医学的にあることを確認して決めていく必要があるものであるようです。

産後数日に授乳回数も多く、生活のリズムも一定しない赤ちゃんとの生活に根気よく付き合う母乳育児は、実はこのような安全管理を特に意識しなくても行えるという利点もある、とも言えると思います。


ミルクを育児に利用しているママたちは、このような手間をかけることでミルクを安全に扱うことができるのだという情報をいつも意識して集めておくことも大切になります(残念ながら乳業会社さんからの情報がベストと、言いかねる現状があることも少し気にかけておいたほうがよさそうです。国際規準(*)や「母乳育児の文化と真実」というような本がどうして存在するのか、ということから、自分で情報を集めることの大切さがわかるかと思います。)






(*)JALC出版物で「『乳児の健康を守るために:WHO「国際規準」実践ガイドブック」が発売されています。この本は、ミルクが適正に市場で販売されるための国際規準(条約ほどの強制力はありませんが、国内法が従うべき規準、というものです)
その規準にのっとった販売方法をとっている企業の情報は信じてもいい、と思うのですが、なかなかぎりぎりのところでの規準違反が認められる(決して作っている製品の機能や安全性の問題ではなく、あくまでも流通の問題なのですが)マーケティングをしていることも、ミルクを見るときには気に掛けていきましょうね。このように色々な視点から赤ちゃんの安全を守るのはママやパパこそであることもミルクの作り方と同時に重要なことなのです。)

Commented by yoppy at 2007-07-24 13:50 x
以前、仕事のため娘を半日だけ親に預ける事になり母乳を搾乳して冷凍保存パックに入れて、消毒した哺乳瓶と一緒に預けました。専ら母乳オンリーの私にはこれだけでも手間な話。さらに母乳をあげる時も湯煎で解凍して人肌の温かさにして…と面倒だったようです。こう考えるとあげたい時にパッと乳を出して飲ませられる母乳って本当に便利だなぁとしみじみ感じました。娘は体重が6キロを超えてお肉タプタプです(笑)
Commented by Dr-bewithyou at 2007-07-27 06:58
yoppyさま>
そうですね(^.^)
かわいい赤ちゃんをおいての外出は、さびしかったでしょうね。
もしかしたら、気分転換になったでしょうか(^.^)

直接飲ませるより、搾ってもミルクにしても、
どうしても一手間二手間余計にかかってしまいますよね。
(ちなみに、哺乳瓶でなくてもおっぱいを搾って入れた
 ぐい飲みやコップからでも赤ちゃんは飲むことが多いです。
 実は冷蔵母乳も数時間以内に飲ませるのならば
 元気な赤ちゃんでは安全です。
 おっぱいの中の殺菌成分が働いてむしろ冷蔵母乳では、
 細菌数の減少が認められると言う驚きの事実があります。
 しかも冷蔵だから40℃のお湯で湯煎してもすぐに飲ませられるので、
 ちょっとお出かけする時には役に立つかと思います(^0^))


これから、ママやパパになるお友達にも是非、
最初が大変だけど、おっぱいが出始めてからはラクなのよ、と、
yoppyさまのように現役ママが伝える言葉は、
きっとしみ込んでいくのだろうと思います。
by Dr-bewithyou | 2007-07-21 20:26 | 情報メモ | Comments(2)

赤ちゃんとのつきあい方の情報メモ。母乳育児支援(おっぱいライフ応援)をしている産婦人科医・IBCLC 戸田千のブログです♪ 下方の「ブログの説明」に利用上の注意もありますので必ずご覧になってください。


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