お祖母ちゃんはミルクで子どもを育てたけれど、、、

現在の母乳だけで育児している母親の数は一か月健診の時点でおよそ4割です。今から20−40年前では、2割台まで下がっていた時代が有ります。8割弱のお祖母ちゃん世代は育児に当たり前にミルクを使っていたことでしょう。

つまり、今、お祖母ちゃんになる世代の人たちは「ミルクほど良いものはない」「母乳育児は野蛮だ」「子どもはできるだけ構わずに育てることで自立心が育つ」「泣くのは肺の訓練」などという時代の中で必死にこれからママになるわが娘たちを育ててきたということになります。

沢山出る母乳は搾って捨ててミルクをあげることも当たり前でした。赤ちゃんを抱きしめれば「抱き癖がつく」と非難されるのも当たり前でした。赤ちゃんが泣いたら忍びなくてこっそり抱いていたママもいたことでしょう。母乳を搾って捨てるのが面倒で母乳だけで育てていたママは後ろめたさを感じていた事も十分に考えられます。


まずその時代は、それが「正しい」育児と言われていたのです。だから、お祖母ちゃんたちが間違っていたなのではなくて、お祖母ちゃんたちは精いっぱいに正しいと言われている情報に沿った育児を、やっぱりまじめに一生懸命に行っていたと思っていいと思います。





さあ近々孫が生まれる!
そのときにお祖母ちゃんがイメージするのは、自分が苦労したことをわが娘や、わが嫁が経験することなく少しでも明るい気持ちで暮らせる育児のお手伝いをする自分の姿ではないでしょうか。もしかしたら、自分の出来なかったことを「今度こそ上手くやりたいものだわ」と思っている人もいるかもしれないですね。

時代が進んで、以前は神様だったミルクは「お薬の代わり」という「道具」の一つに変わってきました。多くの研究から野蛮だったはずの母乳に色々な力が宿っていることが分かってきたのです。



お祖母ちゃんは、では、どんなふうに我が娘や息子の嫁が新米ママとしてスタートするシーンに参加したら良いのでしょう。

母乳育児支援をしていますと、時にお祖母ちゃんの応援のために沢山出ているおっぱいが止まったり減ったりするシーンに出会う事があるのは残念なことです。もちろん、その根っこに有るのは決して意地悪ではなくて、「より健康に」「気楽に」「楽しく」という思いが有るだけに、一概に否定するのは忍びない場合が多いのです。


お祖母ちゃんが知っていてくれたら助かるなあ、という事をいくつか書いてみます。

◇3時間ごとの授乳、は、ミルクで赤ちゃんが消化不良になったりしないために生まれた規準
母乳はものすごく色々な飲み方が有ります。確かに3時間ごとでの授乳で済む赤ちゃんもいないわけではないです。
でも、多くはもっと授乳回数は多いものです。
特に生まれて24時間以内には起こしてでも8回以上の授乳が望ましく、生まれて数日は1日に10−12回の授乳が必要なのです。
そういう訳なのですが、2時間に一度の授乳だと「回数が多いのでは?」「母乳が出ていないのでは?」と、不安になるお祖母ちゃんも少なく有りません。

赤ちゃんは生まれる直前には、20分くらい寝て20分くらい目覚める生活をしていました。当然、いつでも羊水を「飲む」事は出来ていたはずです。
水の中に浮んで抱きしめられているような子宮の中にいたのに、やたらと明るかったり、妙にハッキリした音に囲まれたり、とても赤ちゃんはとまどっています。

そうなんです。以前よりも、生まれてすぐの赤ちゃんの持つ能力が優れていることが分かってきたのです。
30cm位は目は見えています。嗅覚はビックリするくらい鋭いのです。
ママの声を覚えて生まれてくるようです。
味覚ももう生まれています。
抱きしめられたりさすられたりすると自律神経のバランスが取れてきます。

羊水の匂いと、ママの乳首の匂いが似ているとも言われています。出ていないおっぱいをモグモグとくわえていると、「空乳(からぢち)を飲まして可哀想」とおっしゃる方がいるのですが、モグモグしていることでも赤ちゃんは満足できるのです。必死に空気に慣れようとする時に、おっぱいに吸い付く行動は赤ちゃんを慰め、そして母乳分泌を多いに促すのです。


◇母乳には細胞成分やホルモンや酵素が入っていて、それはミルクには入れられないもの
日本のミルクの研究はとても丁寧に行われていて母乳の素晴らしさを確認する役割も果たしてきているかと思います。ただ、ミルクは「母乳に入っているものしか入れられない」というルールの元で製造されています。時に、母乳よりも素晴らしいものと誤解させるような情報も有りますが、もし母乳よりも素晴らしい、としたら、それは赤ちゃんの健康に関する部分では有りません。
ミルクの素晴らしさは「便利」なこと。

母乳だと飲まないで泣き続ける子がミルクだとしっかり飲んでコトンと寝てくれます。
・・・お腹一杯でもミルクは飲みます。そして、消化が悪い為に消化管の活動が精一杯で精神の働きは一時お休みとなるわけです。

やってはいけないことだけれども、ベビーベッドに寝かしたままでほ乳瓶はくわえさせられます。おっぱいでは必ず密着しないといけないのに。

もちろん誰でもあげられます。


さて、規則正しい生活を送り、適度にママが外出も出来る便利な生活は、赤ちゃんにとっても嬉しい生活なのでしょうか。
親の都合がいいように育てた子が乳児から幼児になった時にもずっと都合の良い子でい続けられるでしょうか?

おっぱいライフを通り抜けた赤ちゃんとママとは、お互いの気持ちを伝えたり読んだりするトレーニングを授乳するたびに積んでいるためか2−3歳くらいまでに、それぞれの親子がそれぞれの性格や立場に応じた程よい距離感で付き合えているように思います。(データはとっていませんが(^o^;))


ミルクだけを飲んで育った子は、母乳だけで育った子に比べて、アメリカ小児科学会の方針宣言(JALC(http://www.jalc-net.jp/)の資料ダウンロードからダウンロード出来ます)から引用させて頂きますと、
先進国(中産階級を含む)における研究でも、発展途上国における研究でも、母乳を与えることにより、細菌性髄膜炎、菌血症、下痢、呼吸器感染症、壊死性腸炎、中耳炎、尿路感染症、早産児での遅発性敗血症といった多くの感染症の発生率と重症度が低下するということが強く示されています。さらに、合衆国においては、母乳で育てられている乳児では、新生児期以降の乳児死亡率が21%低下します

などの利点を受けはぐっているということを今は「母乳が出ないお母さんがかわいそうだから」という事情で大きな声で言わない世の中でも有ります。(もちろん、もっと色々な長い間子どもに影響する母乳育児の利点が有り、ミルクの問題が有る事がわかってきているもです)


◇ミルクを足すことで母乳分泌が減少する
以前から当たり前に足してきたミルクですが、母乳を出す為に大事なことは「母乳が吸い取られる」または「母乳を搾りだす」つまり、乳房の中を毎回できるかぎり空っぽにする事が必要なのです。
つまりミルクを足すと母乳の分泌は増えないと言う仕組みが有るわけです。

ミルクを哺乳瓶で飲んだ為に、おっぱいに吸い付くのが下手になる赤ちゃんもいるくらいです。

赤ちゃんが泣く時におっぱいが足りないことも有るでしょう。でも、お客様が多かったとかお宮参りのようなイベントが有ったとかで興奮しすぎても赤ちゃんは泣いてしまいがちなのです。
母乳はやる気なくくわえると、ママは気づきます。。。「要らないみたい」。それで、他のことで赤ちゃんの気を紛らわそうとすることはとても赤ちゃんにとって安心な時間になるのです。



◇泣いてしまう前に授乳する
赤ちゃんは、ラ・レーチェ・リーグの「改訂版だれでもできる母乳育児」(メディカ出版)によりますと、10秒も泣くと何を欲しがっていたか忘れてしまうのだそうです。

だから泣いてしまう前に抱っこしてあげましょうと言う訳です。赤ちゃんは手を舐めたらおっぱいをもらえるのだと学習すると、本当に不思議ですが生後1週間くらいで、ママに上手にそれをアピールすることを身に付けて行くことが出来ます。

抱き癖どころか、とんでもない我が儘な子どもになってしまいそうだ、と心配するかもしれないですね。でも、して欲しいことをしてもらっている子どもは、満足している子どもに育って行きます。
満足している子どもはお友達やママやパパを気遣う余裕も育って行くようです。

満足する、つまり満たされることは、生きるのが大変な人生の中で大きくなればどんどん機会が減って行くものです。赤ちゃんの時に抱きしめられて「自分はママやパパやお祖母ちゃんやお祖父ちゃんにとってかけがえのない大切な存在なのだ」という気持ちで世の中を見つめる経験は、大人になれば忘れて行く記憶になりますが、心の根っこをしっかりと育ててくれるものとなることでしょう。







お祖母ちゃんたちも新米ママと一緒に、我が子の時には見る余裕のなかった赤ちゃんの表情の変化を楽染む毎日を過ごして頂ければと願っております。
Commented by まるいココロ♪ at 2010-11-23 12:45 x
ミルクの与え方をめぐって、両親と大喧嘩。

なるべく母乳で育てたい私。足りないのは赤ちゃんがかわいそうだからミルクをあげなさい、と退院直後から言う母。母乳がそんなに急に増えるはずない、という父。

「現実を見なさい!」と、何度言われたことか…。

けれど、赤ちゃんを大切に想う気持ちは同じ。

しっかり抱っこして母乳をあげて、心を込めてミルクを作っています。

願いは、ひとつ。
赤ちゃんがすくすくと健康に育つこと。
Commented by Dr-bewithyou at 2010-11-23 19:46
まるいココロ♪さま>
ブログにコメントをありがとうございます。

一番、わかってくれそうなジジババが、
母乳育児に関しては一番の障壁になっていると、
とても悲しい思いでいらっしゃることでしょうね。

これが、渾身の思いでマーケティングを行った、
20年前30年前の乳業会社さんの置き土産です。
ミルクの有害性についての情報はあまりに知られていません。

>心を込めて
80℃のお湯で安全に作ったミルクを目を合わせながらこそっと
「これはお薬だから、いつまでも飲まないものなのよ」と、
赤ちゃんに話しかけていきましょうね。

母乳が出続けていれば何とかなる物です。
いつか赤ちゃんがミルクか母乳を選ぶし。

ババの言動で困ったことがあったらお知らせくださいね。
一緒に、ババの傷つかない方法を見つけていきましょう。

めげずにがんばれる方法を探していきましょうね。
Commented by 悲しみ子 at 2017-06-02 09:14 x
『さて、規則正しい生活を送り、適度にママが外出も出来る便利な生活は、赤ちゃんにとっても嬉しい生活なのでしょうか。
親の都合がいいように育てた子が乳児から幼児になった時にもずっと都合の良い子でい続けられるでしょうか?』
ひどい言葉。とても悲しいです。
母乳育児を希望していて、毎日葛藤しています。母乳相談もしています。しかし、子どもが乳首を吸ってくれないため、やむなくミルクで育てています。
3時間おきの授乳の間(約2時間)に、哺乳瓶の消毒、搾乳、マッサージなどをやっています。あっという間に次の授乳の時間が来ますし、その間にぐずったりされると、自分のことをやる時間はほとんどなく、ひどい時は寝る時間も全く取れないことがあります。
それを見た義母に「母乳にしたらもっと楽になるわよ」と言われました。それを聞いて母乳の方が楽なんだと思いました。しかし、子どもが吸ってくれないことにはしたくてもできないのです。

>親の都合のいいように育てた子?

母乳の素晴らしさはわかりますし、それについては私も賛同します。しかし、それに乗っかって全てを思い込みで否定するのはやめて欲しいです。何か優位な点があるからと全てが悪いものと人格否定、偏見、等に発展するその思考回路は、それこそ教育にも良くないのではないでしょうか。
あなたのような人が育てた子どもは、気づかずに人を傷つけてしまうよう人になるのでしょうか(ということを言われたらどんな気分になりますか?これは比喩です。)

あなたが少しでも思いやりを持てる人になれますように願っています。
Commented by ひろみ at 2017-07-05 18:32 x
私はめんどくさがりもあり、完全母乳育児です。主人が仕事しなくてもいいと言ってくれるお蔭です。完全母乳、こんな楽なことはない。確かに預けられないし、授乳室ある街中しか行けません。(ケープ苦手)だけど、ずっとべったりで幸せですよ。文面にある通り、意思の疎通ができてる感じします。母乳育児は痩せますしね〜。食べ過ぎたら、たくさん捨てたらいいし。現在、7ヶ月。あと一年母乳育児します。離乳食はゆっくりペースで進んでいます
by Dr-bewithyou | 2009-01-11 16:23 | 問題発生 | Comments(4)

赤ちゃんとのつきあい方の情報メモ。母乳育児(おっぱいライフ)の応援をしている産科医 戸田千のブログです♪ 下方の「ブログの説明」に利用上の注意もありますので必ずご覧になってください。


by Dr-bewithyou
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