新生児の体重が増えないとき

母乳が出ているかどうか、ミルクと違って目盛りもなくて心配。と、
足りない気がして、本当は足りているのに
不必要なミルクを足しているお母様は案外多いのですが、、、
本日は、退院後に、
本当に体重増加が思わしくなかったりマイナスだったり、
という親子が続いてしまいました。

体重が増えない→母乳が出ていないと判断→ミルクの指示。

↑のような指導をしている母子医療保健に携わる方が
少なくないのですが、
本日の赤ちゃんの体重増加不良の母親の一人では、
確かに母乳分泌不全(最初は出ていたけれども、
授乳の痛さのせいで授乳回数が減ったために減ってきたもの)でしたが、
他の方は溢れるほど母乳が出ているのです。


おさらいです。
母乳が出ているかどうかの判断の基準は以下の2点を
観察しましょう。

◇ほとんど色のないおしっこが、紙おむつにずっしり
 1日に6回は出ていること
 (ずっしりの目安は卵1個分50-60mlの水をほとんど汚れていない
  紙おむつに実際にかけて見て実感しておくと役立つ事でしょう)
 (2022/07/23追記→ 便が出ていることも重要です。)

◇最低体重からの体重増加は1日平均25g(ラレーチェリーグ)
 (体重増加の平均は私が以前勤めていた病院で統計を取ると
  だいたい1日平均35gでした。
  以前は20gという数字も使っていましたが、
  20-25gは支援者が一緒に赤ちゃんを観察していく際の
 「最低限」であって、
  気をつけて観察する事を必要とする体重と考えた方が
  安心だと思います)

この二つだけでもかなり役に立ちますが、
結構、排尿はしっかりあるけれども体重は増えない事も
少なくありません。
   (ミルク会社さんの説明は、
    足りているかどうかの基準に示しているものからして
    あやしいことがあるのでご用心)


【尿も減ったり濃くなったりしている時】
母乳分泌が足りないサインのひとつです。
自分で搾ってみても評価を勘違いすることが少なくないので、
出ているかどうかは、尿量が少ない時点で、
気をつけた方が安心だと思ってくださいね。


そこで母乳をあげたい思いから、
急にミルクを思い切って減らしたのに間に合うほど、
母乳分泌が増えていない状態では何とかして
赤ちゃんの栄養を考えてあげる必要があります。


ほ乳瓶に慣れた子は、直接授乳では
うまく飲んだような振りをして、赤ちゃんの口には
実際には母乳が入っていないことも珍しくありません。

ミルクが結構増えてから、母乳主体に戻す時は、
面倒ではあっても搾母乳を今までのミルクに置き換える方が
体重増加を保ち続けられて安心です。


搾るのがうまくいかなくても、1日という単位でなくて、
1週間という長い目で見ると、少量ずつでも搾っていると、
生後1ヶ月くらいまでならジワジワと母乳の量は増えてきます。

母乳が作られる仕組みは「出た分が増えると作る量が増える」
と言うものだからです。


いきなりミルクを止める方法は私も昔は行っていましたが、
医療スタッフがかなり密に赤ちゃんと母乳の状態を
観察できる施設でないならば、赤ちゃんの体重増加を
足踏みさせていても気づかないこともあるため、
私は最近は、時間は余計にかかっても自宅で安心しながら、
安全に赤ちゃんに栄養をあげるためには、
搾った母乳とミルクとを交換していく事を提案しています。

母乳は、案外と増えてきます。
母乳を出しやすい環境をととのえて
必要な心身のケアをととのえられた場合では、
どんなに頑張っても極端に分泌が少ない人
というのは1%前後はいるというのが実感です。

ただし、母乳を出すための
環境もケアも準備されていない産院が
まだまだ少なくないのに、母乳の良さばかりが
広まった現状はとても重大な問題を
はらんでいるとも言えます。(2016/7/12追記)



【尿は薄い色で、量もしっかり出ている時】
こういう場合、母乳は出ていることが多いです。
前半のタンパク質メインの母乳は沢山飲んでいても、
後半の脂肪分の多い母乳(後乳)を飲む量が少ない時にも、
尿量はあるのに体重が増えないことになります。

で、今日は、溢れるほど母乳が出ているタイプの
親子もいました。

ポジショニングとラッチオンとに、慣れていないかどうかは、
どこを観察すると良いかというと、
◇授乳中に乳首が痛い
◇授乳後も乳房がカチカチだったりしこりが残ったりする
◇子どもがいやがってのけぞるように見えることもあります
(子どもさんも一緒に工夫しているのであって
いやがっている訳ではなさそうです。)

そういうときは、
授乳中の痛みを解消する姿勢をみつけたり(後述)
授乳後におっぱいが、可能ならヤワヤワになるくらいまでは、
搾ったりして、母乳をあげていきたいです。


搾ってすぐに飲ませるなら暖めなくても大丈夫です。

冷蔵庫にしまっているなら次の日までに、
40℃くらいのお湯で湯煎にかけて飲ませてあげてください。
(もっと母乳は腐敗しないのですが
 ここでは細かい事を省略しています)

冷凍庫で保存しているならば、流水で溶かして、
40℃くらいのお湯で湯煎にかけて暖めてください。
(電子レンジは一部は沸騰していたりして危険です。
 ほ乳瓶などの消毒に使っても、暖めに使うのは避けてください)


そして、赤ちゃんに母乳をあげるのを楽にするためには
耳たこの、ポジショニングとラッチオンです。

LAYLAちゃんの姿を見ながら、赤ちゃんが飲みやすいように、
どう抱いたらいいか、研究してみましょう。

「飲ませてあげる」から、
「飲めるように協力してあげる」に、目の付け所を、
替えてみてくださいね。

そうすると、必ず痛くない授乳ができるようになります。

痛くない授乳の方が沢山母乳が出るのです。



まず、赤ちゃんの体重を増やすことは大切です。
ミルクと母乳と同じ量なら、母乳の方が体重が増えます。

搾るのは面倒ですが、良好なポジショニングと
ラッチオンとを見つけられたら、
いつまでも搾り続けないといけない親子はかなり少ないです。


しっかり、搾った母乳やミルクを飲ませても、
体重が増えないならば、赤ちゃんの消化機能などの確認が必要です。
そういう問題がないかどうかを確認するためにも、
赤ちゃんの体重が増え始めるまでは、注意深く観察して
いくことが大切なのは言うまでもありません。


赤ちゃんに母乳をあげたいと言う気持ちは素晴らしいです。
どうか胸を張ってくださいね。

飲むワザ、飲ませるワザが身につくまで、
お薬として搾った母乳や、ミルクを使っても、それは、
敗北ではないです。
赤ちゃんが健康を損なうことこそが、負けです。

せっかく出ている母乳が、赤ちゃんの胃袋に納まるように、
気をつけていきましょう。






不要なミルクを使わずにすむように、
フォローする専門家がどこにでもいる時代を作っていきたいと、
クリスマスに誓うのでした。





人気ブログランキングへ
↑この記事がお役に立ちましたらワンクリックお願いします(*^^*)



「メディカルウーマン」></a><br><font color=「メディカルウーマン」に、参加しています。




about me:
香川県高松市の産科クリニックに勤務していますm(_ _)m
ハグブログに共感する思いでお産を見守る助産師さんとの出会いも
あったらステキだなあ、と思っております。

目標は「母乳育児支援を学ぶ会in四国第2回」。
まだまだ、道のりは遠いですが一緒に実現してくれる
仲間を募集しています





Commented at 2010-12-26 13:41 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2015-01-21 18:19 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2015-01-21 18:27 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2017-10-18 04:25 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by Dr-bewithyou at 2017-10-20 23:10
2017-10-18 04:25 鍵コメさま>
沢山コメントを書いてくださってありがとうございます。お産や育児で色々な経験をなさったのですね。

折角書いてくださったのに対して、補足量については赤ちゃんが今、摂取している栄養の不足分の評価を実際の診察抜きに行うのは非常に難しいのです。鍵コメさまがお産をした産院でのミルクの補足量についての情報に、不安を感じての質問かとは思いますがここでの回答は控えさせてくださいませ。
実際に、赤ちゃんと鍵コメさまご自身を目の前にして補足量を決める事が大切ですのでご容赦くださいね。(ラ・レーチェ・リーグやIBCLCがご近所にあると、このブログと同様の視点でご相談に乗れると思います)
by Dr-bewithyou | 2010-12-24 21:44 | 問題発生 | Comments(5)

赤ちゃんとのつきあい方の情報メモ。母乳育児支援(おっぱいライフ応援)をしている産婦人科医・IBCLC 戸田千のブログです♪ 下方の「ブログの説明」に利用上の注意もありますので必ずご覧になってください。


by Dr-bewithyou
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31