2011年5月18日は母乳代用品に対する国際規準30周年

この話題になると、つい書きすぎる私でした。
長文失礼。
文中のリンクも多いですけれども参考になるものがありますので、
リンク先だけでもご参照くださいませm(_ _)m

2011年5月18日は母乳代用品に対する国際規準30周年_d0063558_85627100.jpg






国際規準は、
NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会の
「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準(WHO:1981)」

や、
BSN(母乳育児支援ネットワーク)の
WHO規準~母乳代用品の販売流通に関する国際規準

に内容が書かれています。(英語の翻訳版です。ともに翻訳した抄録版です)


これはWHOが乳幼児の健康を守るために、
イノチェンティ宣言等を掲げて、
母乳育児を、その目的達成の手段の一つとして選んだ
という背景の元に行われたものです。


確かに、ミルクの存在は、牛乳やコンデンスミルク、重湯で
赤ちゃんを育てていたときよりも乳児の命を守ってきた側面もあります。

同時に↓の本(H28年時点現在では絶版)に書かれていますが、
ミルクが非倫理的、非科学的な営業戦略で販売数を増やし、
ミルクによる乳幼児の死亡や健康障害の報告も
後を絶たない、という悲しい側面も、
一般には知られていないことですが、もっています。

母乳育児の文化と真実

ナオミ ボームスラグ ダイア・L. ミッチェルズ Naomi Baumslag Dia L. Michels 橋本 武男メディカ出版

母乳育児のポリティクス: おっぱいとビジネスとの不都合な関係

ガブリエル・パーマー/メディカ出版

(ガブリエル・パーマーさんの↑の本に
 現在H28年現在での情報が詳しいです)


30年たった今もなお、ロイターの記事(英語)では
Campaigners say baby milk code still breached
ということで、多くの企業が、
この国際規準を遵守した販売をしているわけではないという事実があります。
(英語は、得意ではないので、きちんと内容を把握し切れていないので、
 間違っているようならご教示くださいませ)



ミルク会社の営業姿勢というのは、
もの凄く目の付け所が良くて、販売を広げるという、
企業の夢を思うだけならば尊敬に値するくらい見事なのですが、
そこに大切なものがかけている企業が少なくありません。

大切なもの、すなわち赤ちゃんの健康、母親の健康、母や父の自信、、、
そういうものを損ねながらも、
どこまでも「赤ちゃんのため」「お母さんのため」であるかの
誤った印象を植え付ける姿勢を崩さない企業が
なくならないのも事実です。

不必要な母親に、不必要なミルクを売らない。

そんな、誰もが当たり前に行われているであろうと信じられている状態を
ただ忠実に実現したら、
おそらくは多くの社員を解雇する必要が出てくることでしょう。
または人工乳の質の低下を招くかもしれません。


(原発が無くなったら電気が足りなくなりますよ、という文言と、
 この事実に妙な近さを感じているのは私だけでしょうか、、、)



でも同時に、マーケティングにかかる費用が追加されているために、
ミルク一缶の料金を高く設定せざるをえない結果と鳴なっていることも
紛れもない事実なのです。

これは以前うちのブログで書いたことのある内容で
営業活動を縮小し、ミルク代を安くしようというメーカーの話しです。
(ミルクの問題点などについてもまとめて書いています)
http://smilehug.exblog.jp/11864747



30年、コツコツと、非倫理的、非科学的な営業戦略に
目を光らせてきても、
営業姿勢としては皮肉にも尊敬せざるをえないほど、
色々な新しい、国際規準のグレーゾーンでの活動を生み出している
乳業会社さんたちです。

さすがにテレビでのコマーシャルはなくなりましたが、
雑誌などには多くの宣伝が載っています。

商品名が母乳を目指して作ったというイメージを印象づける
ものも少なくありません。


可愛いキャラクターを見ただけでミルク会社さんの名前が
浮かんでくるものもあります。




母乳が足りない子どもがいないとは言いません。
でも、多くのお子さんは、ミルクを一缶でも売るための、
営業のためのリップサービスに翻弄されてミルクを飲んでいることが
非常に多いのです。

例えば、乳業会社さんが作っている育児Q&Aでは
うちのブログに以前書きましたが、
http://smilehug.exblog.jp/12463413
25pある母乳・ミルクの解説のうち18pは、
国際規準違反または、ミルクの安全性を保てない方法が
書かれていました。

それを元に多くの母親はミルクが要らないのに足してしまう、
そういう育児をせざるをえないことになるでしょう。




一人一人が悲しんだり、怒りを持ったりしても、
状況が変わらないならば、ということで
団体として活動する
乳児用食品国際行動ネットワーク(IBFAN、イブファン)
という団体もあります。

国際規準違反を一つ一つチェックしていこうというものです。




長くなりましたが、それでも30周年、おめでとうございます。

と、言っても良いのではないか、と思っています。
なぜなら、私が研修医の時代よりも遥かにたくさんの母親や父親が
母乳育児に対して強い興味を持つように変わってきているからです。


残念なことに多くの母子保健医療スタッフの方が、
ミルク=神であると思い込んでいらっしゃるのが現在の状況です。

フォローアップミルクをすべての赤ちゃんに勧める小児科医の先生が、
まだいらっしゃる事はたびたび耳にします。
フォローアップミルクは母乳の代用品では有りません。
フォローアップミルクはあくまでも牛乳の代用品です。
※参照:厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」

ママたち、パパ達が、我が子の母乳を飲む権利を守りたい、と
少しずつでも意思表示することも、
そのスタッフ達を替えていく力になっているように感じております。





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about me:
香川県高松市の産科クリニックに勤務していますm(_ _)m
ハグブログに共感する思いでお産を見守る助産師さんとの出会いも
あったらステキだなあ、と思っております。

目標は「母乳育児支援を学ぶ会in四国第2回」。
まだまだ、道のりは遠いですが一緒に実現してくれる
仲間を募集しています








By Barbara Lewis
GENEVA | Fri May 13, 2011 1:26am IST
(Reuters) - The world's leading baby milk companies still flout a global code on marketing breast milk substitute, a campaign group said on Thursday, the eve of the 30th anniversary of its adoption.

Nestle and Danone, respectively the number one and number two baby milk distributors, were the worst offenders, the International Baby Food Action Network (IBFAN) said in its latest biennial report.

"Breaking the Rules, Stretching the Rules 2010" accuses 11 major companies of violating the code through marketing techniques that can mislead mothers into thinking their products can improve a child's wellbeing.

"The biggest problem now is the use of claims," said Annelies Allain, a director for IBFAN in Malaysia, citing suggestions formula milk could improve health and intelligence.

IBFAN said it would keep up the pressure on Swiss-based Nestle with an ongoing boycott, but has for now decided against calling on consumers to shun Danone's products.

" ... in response to this report, Danone has said actions it will put in place will account for 50 percent of the violations in the report," Mike Brady, campaigns coordinator in Britain for IBFAN, told a Geneva news briefing.

He said Nestle had said it would address four out of 134 allegations of a breach of the code.

Danone did not wish to comment on the allegations that it was in breach of the code more than 100 times.

A Nestle spokesman disagreed with IBFAN's interpretation of the International Code of Marketing of Breastmilk Substitutes and subsequent World Health Assembly resolutions.

"Obviously, we take these allegations very seriously as we take any allegations concerning the code," said Nestle spokesman Robin Tickle.

"We fundamentally disagree with their (IBFAN's) interpretation of the code. However, there are four allegations where we feel there is some justification and we have invited them to discuss this."

IBFAN said the trend was to use seductive marketing as companies compete in a market estimated to be worth $31 billion.

"Companies are competing with breastfeeding and if breastfeeding rates increase, their sales decline," Brady said.

He said the major baby milk manufacturers "got away with" code breaches when they could and countries such as Brazil where it is tightly enforced had seen a big increase in breastfeeding.

Brady cited research that found only one in two Brazilian women breastfed until the second or third month in 1975, but by 1999 one out of two breast-fed for 10 months.

The IBFAN report is based on the findings of independent monitors from 46 countries.

The World Health Organisation, a U.N. agency, endorses the code and recommends exclusive breastfeeding of babies for six months and for two years with complementary foods.

(Additional reporting by Dominique Vidalon in Paris; Editing by Stephanie Nebehay and Alison Williams)

WORLD

Commented by しろたん at 2011-05-22 19:53 x
フォローアップミルクですが、離乳食の講習会で「みなさん飲ませましょう」と言われたという話を聞いたことがあります。耳を疑いました…。都内某区の話です。

話は少し横にそれますが、無料で配られている=商品に値段が上乗せされている、ということはミルクに限らず他の商品にもいえることなんですが、意外と知らない人が多いようです。私はそのカラクリを知ってからは無料にとびつかなくなりました。
Commented by Dr-bewithyou at 2011-05-23 12:41
しろたんさま>
フォローアップミルクは、牛乳の代用品だということ。
人間が生きていくのに牛乳は不要で、あくまでも嗜好品であることは、
離乳食教室や、時に残念なことに、乳業会社さんからの
情報によって育児指導している小児科の先生によって、
強く勧められているのは、困ったことですよね。

そして、「無料」。。。
ただ一言。「ただほど高いものはない!!」、、これに尽きると、
お母様達、そして、産科医の先生達に賢くなって欲しいですよね。
by Dr-bewithyou | 2011-05-18 20:23 | 情報メモ | Comments(2)

赤ちゃんとのつきあい方の情報メモ。母乳育児支援(おっぱいライフ応援)をしている産婦人科医・IBCLC 戸田千のブログです♪ 下方の「ブログの説明」に利用上の注意もありますので必ずご覧になってください。


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