寄付された液体ミルクに書いてあるフィンランド語の説明は?

少し、おそくなりましたが液体ミルクの解説のフィンランド語→英語の内容をIBCLCが行ってくれた和訳です。
翻訳の本体は一番下のMore 以降をご覧下さい。



まず、ここでは人工乳がどのように開発され、流通しているかの説明も書きましたので、少しお時間がいただける方は、赤ちゃんが安全に人工乳を利用するために知っておきたい情報としてご覧になって下さい。


日本では人工乳というと粉ミルクです。粉を圧迫したキューブ型も普及していますが粉である事には変わりなく、乳児用調製粉乳として販売されています。うちのブログの 

WHOの乳腺炎のガイドラインの参考文献を眺めてみました という記事で人工乳の歴史について書いてありますように、昭和34年に乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)で乳児用調製粉乳の規格が制定されています。粉ミルク自体は健康増進法にて安全のルールが定められています。その中で販売出来る粉ミルク製品の成分は規制されていますが、営業は会社に任されています。私の記憶にもないのですが、昔はテレビでもどんどんコマーシャルがされていたそうです。


人工乳が開発された経緯は赤ちゃんの健康をいかに守るか,いかに安全な母乳代用品を作るかという、母乳を様々な事情で飲めない子どもを守ることが目的でした。しかし開発の手間暇と、赤ちゃんが使う物だけに1人ずつが使う量はどうしても少ないことは想像に難くなく、激しいマーケティング攻勢が始まりました。赤ちゃんを救うためのミルクが、赤ちゃんの健康を害するきっかけになりかねない状況にあっという間に突入してしまいました。WHOからは適正なミルク販売を求めて1981年に

母乳代用品のマーケティングに関する国際規準(邦訳全文) が出されましたが、その後も赤ちゃんの健康を守ることを難しくするようなマーケティングは手を変え品を変え現れたため さらに 1990 年,WHOで乳幼児の健康と生存を守るために採択された『Innocenti 宣言』では,乳幼児の理想的な栄養法として母乳育児を選択しています。 ( UNICEF, Innocenti Declaration2005. : イノチェンティは養育する親のいない子どもを育てる乳児院ですが、子どもの健康に関する研究も行っている施設です。)

尚、日本ではこの国際規準の国内法制化は実現していないために、乳児用調製粉乳の無料配布や製品に可愛いイラストをつけることは、倫理としては望ましくはないのですが、販売競争の手段としては,現状では自由にそのようなことをする事が許された状態ではあります。国際規準というのは国内法制のお手本なので,本来は「外国のことだから、ムシして良いもんね」というルールというよりは、急いで法制化が望まれる項目と捉える方が妥当です。私達、母乳育児支援に携わる物はこの国際規準が国内法制化されるよう、働きかけることが求められているのでしょうけれども、中々実現出来ないでいます。
ミルクの自由な販売競争により,日本ではミルクの値段の4割程度が、そういう宣伝費などの経費として上乗せされているとも言われています。(2010年の記事ですが 

ミルクの値段のうちかなりの部分は、営業費の上乗せ という記事もブログには書いたことがあります)


フランスとベルギーなどでの髄膜炎の集団発生が粉ミルクを原因として起きた出来事からWHOなどから調乳のガイドラインが2007年に作成されて,日本でもすぐに仮訳が出ているのが→乳児調製粉乳の安全な調乳、保存および安全な取り扱いに関するガイドライン となります。製品が不適切なわけではなくて、乳汁そのものが無菌ではないこと、環境の中にも存在しうる菌でもあることも原因の一つです。
乾燥に強いサカザキ菌(現在はcronobacter クロノバクタ-と呼ばれています)は髄膜炎を起こすことがあるために、調乳の際に殺菌することが必要です。逆に言うと清潔な器具を使えば温度管理だけで殺菌出来ると言う事です。

この細菌感染への注意喚起はアメリカのCDCからも出ているのが今年4月28日の

CDC warns of Cronobacter in powdered milk, infant formula  BY NEWS DESK |






More フィンランドから来た液体ミルクの説明の翻訳です。
母乳育児のポリティクス

【海外からの製品には正確な日本語訳が必要】
この写真は、熊本で配布されているフィンランド製の「液体ミルク」で、朝日新聞の記事にあったものです。これは生後6か月未満の赤ちゃんには適さないとパッケージにフィンランド語で書かれているフォローアップミルクです。
使うお母さんもしくは支援者は、必要な月齢の赤ちゃんにだけ安全に使われるよう、パッケージに書かれていることをしっかり理解してその適切な使用について知ることが大切でしょう。現地で訳されているかどうかの情報が入らないので、こちらでこの製品を知っている知人から英語訳を手に入れ、それを緊急に訳して紹介します。

製品の使用:フォローアップミルクは、生後6ヵ月を超えた乳児で、母乳が十分ではない、もしくは母乳を飲んでいない場合に適しているものです。容器をよく振って使います。薄めてはいけません。常温のまま飲ませるか、以下のように温めます。パッケージのままか哺乳びんに入れてお湯につけます。電子レンジに使う場合は哺乳びんに入れ、人工乳首を付けずに温め、よく振って混ぜ合わせて適温にします。(パッケージは絶対に電子レンジに入れないこと!)飲ませる前に新鮮かどうかをパッケージで確認しましょう。一旦温めたら、飲まなかったぶんは破棄します。使用方法を守ることが大切です。
警告!:キャップと下のリングは子どもの手の届かないところに置いてください。小さなキャップとシールのリングは3歳未満の子どもに危険なものになりえます。
保存:傷のない未開封のパッケージは消費期限まで常温で保存します。開封したものは冷蔵し2日以内に使用しましょう。パッケージはリサイクルできます。
重要:赤ちゃんの栄養には母乳がいちばんです。診療所や産科病院には母乳育児のため、母乳育児にかんする起こりうる問題を解決するためのコツやガイドラインがあります。乳児用人工乳やフォローアップミルクを使う前に、保健医療専門家に個別に指導を仰ぐべきです。Premier Tuuti2フォローアップミルクは、生後6ヵ月からの子どもの栄養の多様性の一環として、もしも子どもが母乳で育てられていない場合や母乳だけでは十分でないときに使うことが出来るものです。この製品を使う時は、パッケージに書かれている指示を守ることが重要です。フォローアップミルクは生後6ヵ月未満の子どもには適していません」

(この写真以外に生後6か月未満の製品も配布されています。2つの製品はよく似ていますが、色が違います。)

以下が知人が英訳してくれた内容です。
This is the translated product use information as found on the packaging - "USE OF THE PRODUCT
Follow-on formulas suitable for infants more than 6 months of age, if breast milk is not enough, or not being fed. Shake the container. Use undiluted. Serve at room temperature or warm up as follows: - water bath in its own package or a feeding bottle - in a microwave oven in a feeding bottle without a teat - mix the product well and make sure that it is a comfortable temperature (NOTE packaging must not be placed in the microwave!). Check package for freshness always before serving. Once heated, uneaten product should be discarded. It is important to follow the instructions for use. WARNING! Make sure the cap or below the seal ring is not the child's reach. Small cap and seal ring can be dangerous for children under 3 years of age."
"Storage:
Intact, unopened packaging stored at room temperature until best before the expiration date. Keep open container in the refrigerator. Use the product within 2 days. Packaging can be recycled ."
"Important! Breast milk is the best infant nutrition. Health clinic and maternity hospitals have some tips and guidelines for breastfeeding and to solve possible problems with breastfeeding. You should ask your healthcare professional for individual guidance prior to the introduction of infant formula or follow-on formulas. Premier Tuuti®2 follow-on formulas may be used as part of the child's diversified diet from the age of 6 months, if the child is not breastfed, or breast milk is not enough. If the product is used, it is important to follow the instructions mentioned on the packaging. Follow-on formulas are not suitable for children under 6 months of age."

寄付された液体ミルクに書いてあるフィンランド語の説明は?_d0063558_15512546.jpg


朝日新聞の記事には生後4ヵ月の赤ちゃんを持つお母さんの言葉が、一緒に書かれていますが、この写真の製品は、生後6ヵ月未満の赤ちゃんには適しません。

【補足】この製品自体が危険であるかのように情報が拡散するといけないので、補足しておきます。人工乳が必要な赤ちゃんにとって、安全な水が十分にないところでは、粉ミルクよりもより安全とされているのが液体ミルクの特徴です。栄養の専門の小児科医IBCLCからの情報では、この生後6ヵ月以上用のフォローアップミルクは、生後6か月未満用ではないものの、コーデックス規準には合致しているので、たとえ飲ませても健康被害が起こるとは考えにくいとのことです。

【補足 その2】

パッケージには書かれていて上記に書かれていない点は大きく2点。        1)警告!:キャップと下のリングは子どもの手の届かないところに置いてください。小さなキャップとシールのリングは3歳未満の子どもに危険なものになりえます。(災害後の緊張が続かなくなる時期なので、多分、子どもの事故が増えるだろうから必要な記述だと小児科医が心配しています)
2)重要:赤ちゃんの栄養には母乳がいちばんです。診療所や産科病院には母乳育児のため、母乳育児にかんする起こりうる問題を解決するためのコツやガイドラインがあります。乳児用人工乳やフォローアップミルクを使う前に、保健医療専門家に個別に指導を仰ぐべきです。(こちらはWHOの「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」で定められていて、必ず書かなければいけない情報です。日本の人工乳にも母乳の優越性と必ず専門家の指導のもとにつかうことが書かれています)

乳幼児栄養と母親の健康を守る立場の専門家が知っておきたい情報

緊急用物資としての調整液状乳と使い捨て哺乳びんの取り扱いについての提言

~ 乳幼児の援助に当たる自治体、専門家、NPOなどの援助者の方々へ ~



Commented by こん at 2016-05-08 10:45 x
翻訳を探して辿り着いたお母さん達のために、翻訳を先頭に載せてはいかがでしょうか。
必要な情報の前に、本題と無関係な人工乳のマーケティングについてのあなたの意見を読ませることと、全く関係のないアイスクリームの画像を載せることはどんな意味があるのでしょうか。翻訳を見つけにくくすることと、アイスクリームの画像でブログが終わっているかのように見せることで調整乳をあげるのを断念させようという意図を感じます。
もしもそういった意図がなかったとしても、かなり無神経なレイアウトだと思います。

世界ではハイチ大津波、日本でも東日本大震災などで出された、人工乳の支援は間違った支援であるというメッセージが母乳団体から出されましたが、それに対する反省もなく同じことが熊本地震でも繰り返されていることに怒りを感じます。どうにか、人工乳に対する偏見に満ちた考えを無くすことはできないのでしょうか。
母乳推進運動に子供の健康を奪われた多くの親のひとりとしてはもどかしい限りです。
Commented by なんだろなー at 2016-05-08 11:25 x
母乳の話をすると、すごくトゲトゲしい攻撃的な意見を言う方がいますが、それはもしかして、母乳育児支援でご自身が辛い思いを抱いた経験がそうさせるのだろうとつねづね考えさせられます。適切な支援ではない支援をする支援者がその原因であり、適切な情報と支援をしている人にまで攻撃的に物言うのはどうかなぁと思われます。
母乳のことも人工乳のことも理解しての情報提供がされていても。お子様の栄養方法はそれぞれであり、災害の時はそのお母さんの気持ちがうけいれられて、しかるべき支援がそれぞれの方々にされるべきで、すぐ人工乳ではないというメッセージも必要ではないでしょうか?そういう意味での内容と私は読みました。
Commented by なんだろなー at 2016-05-08 11:25 x
母乳の話をすると、すごくトゲトゲしい攻撃的な意見を言う方がいますが、それはもしかして、母乳育児支援でご自身が辛い思いを抱いた経験がそうさせるのだろうとつねづね考えさせられます。適切な支援ではない支援をする支援者がその原因であり、適切な情報と支援をしている人にまで攻撃的に物言うのはどうかなぁと思われます。
母乳のことも人工乳のことも理解しての情報提供がされていても。お子様の栄養方法はそれぞれであり、災害の時はそのお母さんの気持ちがうけいれられて、しかるべき支援がそれぞれの方々にされるべきで、すぐ人工乳ではないというメッセージも必要ではないでしょうか?そういう意味での内容と私は読みました。
Commented by こぶたちゃん at 2016-05-13 12:43 x
戸田先生のブログでは、母乳育児の役立つ情報だけに留まらず、ミルクの安全な使い方まで網羅されていますよね。逆に、ミルクでもいいんだよと無責任に言う人からは具体的なミルクの情報
聞いたことがありません。

主旨を理解しようとせず↑のような攻撃的なコメントをわざわざ書き込むなんて、母乳育児支援イコールカルトだという思い込みや偏見があるのでは?1度過去ログから読み返してみてはいかがですか?それにレイアウトにまでケチつけるなんて失礼ですよ。

とりあえず被災地にはミルクを送ればいいと言う問題ではなく、慎重にすることで赤ちゃんの健康が守られるということが分かりませんか?被災者に対しても失礼ですよ。
Commented by こん at 2016-05-15 22:34 x
もちろん、粉ミルクや水やコンロは普段から備蓄しておくことに越したことはありません。ただ、災害で備蓄が使えない状態も起こりえます。お母さん自身が怪我や病気というケースもあります。東日本大震災の時も避難所に支援された粉ミルクがありながら母乳支援の名目で手に入らず隣県まで貴重なガソリンを使って求めた話や、関東にいた私のところまで粉ミルクが足りないから送ってくれと連絡があった経験から、非常時には母乳推進という理想は置いておいて、柔軟に母子の支援が必要であると感じました。
ハイチ大地震津波の際の母乳推進運動が行き過ぎて、母乳推進運動自体が批判される流れになったことはアメリカを中心に国際的にも有名なエピソードだと思います。
どのような立場でも、非常時は被災者を一番に考えるべきではないでしょうか。

本題ですが、翻訳文を先頭にした方が良い理由は、非常時に通信制限がかかっても読み込める確率をあげるためでもあります。東日本大震災では現に通信制限と計画停電がありました。
また翻訳文のフォントカラーが薄く、またフォントサイズが小さいので読みにくいかと思われます。これも避難所のような暗所でスマートフォンの省電力モードで読めるよう、はっきりと濃い色調で大きなフォントにしてはいかがでしょうか。コンタクトレンズやメガネに不都合があっても、なんとか読める確率を上げておくのが良いかと思います。
液状ミルクの国内生産が実現するまで、大きな災害が起こらないことや苦しい思いをする母子が出ないことを願うのみです。
Commented by こぶたちゃん at 2016-05-19 17:59 x
ブログのフォントやレイアウトにご意見がおありなら、最初からそのように書けばよかったのでは…戸田先生はデザインのプロではないのですから、ケンカ腰はどうかと思いますよ。

こんさんが、不適切な指導で大変な思いをされた経験があっての反感というのは痛いほど伝わってくるのですが、その矛先を当事者ではない戸田先生のブログに書き込むのはちょっと的外れではありませんか?トンデモ指導をする医療者

それに、戸田先生がされている母乳育児支援とは、何が何でも母乳っていうトンデモとは全然違うんですけど…。ちゃんとミルクが必要な子にも必要な分が渡るように、なおかつ安全に飲めるようにという配慮もされていますよ。

こんさんが指摘された「災害時は備蓄品が使えなくなる・お母さん自身がけがや病気というケース」の為にミルクが必要なことはあります。だからこそ、母乳育児をしているママを不安に陥れるような「母乳は止まる」と言うデマを払しょくする為にもこのような情報発信をされているのでは?

備蓄が足りないのは母乳推進のせいではなく、非常時には自治体もマンパワー不足などの要因があります。ミルクだけでなく他の日常品も品薄でした。備蓄があっても必要な人に渡るには時間も人手もかかります。だからこそ必要でない人に無差別に配られることのないような配慮が要るという話です。ミルクで育っている子に行き渡らないことは、その赤ちゃんの命と健康の危機に直結します。問題点をすり替えても誰も得しません。

ハイチや東日本で母乳推進が行き過ぎた話は初めて聞きました。支援が足りないという話は聞きましたが。よろしければ情報ソースを教えていただけますか?国際問題になったとのことなので、公的機関での情報でしょうか?
Commented by こん at 2016-07-12 17:53 x
書き込み制限を受けているのでお返事遅くなりました。違う端末から書きます。

私のコメントでご機嫌を損ねてしまったか分からないのですが、所々読み違えをなさっているようです。逐一訂正するのはかえって失礼かと存じますので省略します。

ソースを提供せよとのことですが、上記のやりとりを拝見するに、お渡しした資料の内容を素直に、というか正確に捉えていただけるか自信がありません。
それ以前に、私などが提供するまでもなく海外の情報などは学術論文の要約やデータまでもネットで手に入りますし、母子同室による事故の報告書や、母乳推進病院での事後報告、母乳推進による途上国での栄養失調による乳児死亡のニュース、ハイチ大津波の母乳プロモーションによる援助妨害への批判など、きりがないほどいくらでも手に入る時代です。探すか探さないか、現状を直視するか無視するかの違いでしかないと思います。
Commented by ツイッターからきました。 at 2018-07-05 23:50 x
すごく読みにくかったです。
by Dr-bewithyou | 2016-05-05 16:32 | あると便利なもの | Comments(8)

赤ちゃんとのつきあい方の情報メモ。母乳育児支援(おっぱいライフ応援)をしている産婦人科医・IBCLC 戸田千のブログです♪ 下方の「ブログの説明」に利用上の注意もありますので必ずご覧になってください。


by Dr-bewithyou
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