母乳が赤ちゃんに良いとか、お母さんに良いとかは
沢山書いてきていますしみなさまもご存じなので、
今日は「そんなはずじゃなかった!💦」を
生む前に知っておきませんか?という記事です。
文字が面倒くさくて苦手な人だけは
↓の赤い字だけは、こういうことが起きるかもしれないのね、と
見ておいていただけましたら,生んでからびっくりするのが
減るのではないかと考えられます。
まず最初に
「そんなはずじゃなかった!」自体がおかしいので
信じずにスタートしておいた方がいいこと!
→こんなに食事制限が厳しいなんて
→マッサージ料金が高いなんて
→お茶まで買わないといけないなんて
→薬も飲めないなんて。
食事制限は極端な菜食主義(ビーガンなど)とか
栄養不足は問題です。
生活習慣病の方は妊娠前の食事にほぼ戻します。
食べてはいけない物は,消化吸収・母乳生成の面からは
特にありません。
マッサージは,私の母乳外来では提供していませんが
解決しない問題はまずないです。マッサージをすることが
出来るスタッフがいるときに、乳汁の排出のために
マッサージをお願いしたことがたまにあるくらいです。
もし、おっぱいマッサージをお産後ずっと
一週間に二回とか三回とかを継続的に必要とするならば
その施術者さんは「母乳を出す乳房」の専門家に過ぎません。
赤ちゃんの専門家でもなく、母乳育児の専門家でもないと
考えた方が良いです。
お茶やサプリメントで明らかに母乳の量をがっつりふやすとか、
乳腺炎を防いだり治したりするというものの中で、
妥当な根拠のあるものには、私はまだ出会っていません。
マッサージやお茶は非常に普及していて,
さらにそれらが多くの助産師さんから「いいよ」という
情報が発信されるので「辛いが続く」ならば、
効果が出ていないと判断できる目も必要になります。
薬は授乳を止める必要があるのは抗がん剤など
限られた薬剤だけなのですが、
授乳中も飲める薬があることをご存じない内科医師も
残念ですがまだまだ沢山居ます。
授乳している人が飲める薬はとても多いです。
ここからは、よく聞くものです。
簡単な解説とともにどうぞ。
「ほ乳類なんだから、産んだらすぐに母乳が出て 当たり前よね?」 →赤ちゃんが乳首をくわえ,お母さんも赤ちゃんの匂いや 体温を感じる事でプロラクチンという母乳を作るホルモンが お母さんの脳の一部の脳下垂体で作られます。プロラクチンが 出続けることで乳腺細胞で母乳を作る準備が進みます。 プロラクチンは胎盤が出た瞬間に一気に量が増えます。 産後、授乳や搾乳がないと一週間位で妊娠前のレベルになります。 (この2行2017/10/03追記)
産後1週間くらい経つと出した母乳の量だけ、次には出すように 体が変化していきます。(出せばすぐに増えるわけではないです) つまり赤ちゃんを産んでも多くの人では、授乳しなかったら、 おっぱい(乳房)が母乳を作り始めない可能性もあるのです。 人間以外のほ乳類では、赤ちゃんが自分で 歩いて乳首を見つけて、くわえることができるのですが、 人間の子どもにはそれはできないです。 そこからも産めば母乳がすぐにでるわけではいという差は 出てくるとも考えられます。 (母子が産後すぐに別れているほ乳類はいないです)
すぐに母乳は出始めるし, 母子同室でなくてもミルクをあげても 母乳だけに変えられる人が4割くらいでしょうか。
どんどん出始めるのに1-2か月かかる人も珍しくないです。 さらに、残念ですがずっとミルクを併用する必要のある人も 数%−2割くらいはいます、これは産後の母子別室など 産院でのケアの影響もあるにせよ, 授乳してみないと産む前には分かりません。 体質や解剖的な生まれつきの問題によって出にくい事も有ります。 仮に努力しても母乳が出なかったり少なかったりする時は 努力が足りないだけが原因ではない事もよくあります。
「生まれたら3時間毎に赤ちゃんはおっぱいを飲んで
後はすやすや寝てくれる」
→うまれて1週間も経つとそういう子もいますが
生まれた日からそのような子はまずいません。
「思ったより痛い(T_T)」
→これは脅すわけではないのですがよくあることです。
一方で、赤ちゃんが器用に飲んでくれて
最初からほとんど痛まないこともあります。
飲みやすい角度で飲める抱きやすい姿勢を見つけると
多くの場合は改善していきます。
その姿勢は生む前から確認する事も出来ます。
痛みに慣れるわけではなくて痛みの対処法を
見つけることが出来ていきます。
痛いのは我慢しても慣れません。痛くない授乳の
姿勢やタイミングをそれぞれの親子で見つけていくことで
痛くないリラックスできる授乳に辿り着きます。
→対策法:うちのブログのタグ「痛い」「抱っこ」
「乳腺炎」などをご参照ください。
「こんなにたびたび飲むなんて」
→臨月に入ったくらいで赤ちゃんの睡眠パターンは
20-30分位寝て20-30分起きている事が多いです。
胎外に出たとたんに、3時間寝るようになるほど
生き物の体は急に変わらないものです。
またたびたび飲む利点もあります。
たびたび飲む事で、プロラクチンという母乳を出すホルモンを
減らさずにすみます。さらに母乳を増やす事に繋がります。
血液中に出ているものは胎盤が出た後どんどん減っていくの
ですが授乳するごとに,プロラクチンは増えます。
産後早いうちにたびたび赤ちゃんが飲むとか、
搾乳するとか出来るならば,
早く母乳が沢山出るようになる仕組みなのです。
プロラクチンは授乳をしなければ産後1週間で
妊娠前の値に戻ります。
→タグ「足りない?」「産後すぐ」「泣く」
「子どもは好きだけど24時間一緒だなんて(T_T)」
→寝ても覚めても一緒にいることで守れるものがあります。
時々、生まれてすぐ見ても抱いても飽きることがなくて
気付いたら三日経ってました!というほど、
赤ちゃんに惚れ込んでしまう人もいますが、
そこまで惚れ込まない人も普通にいます。
産後、母乳が確立する数日間(産後9日目位から
必要な母乳量もでる母乳量も安定してきます)は
体の仕組みにスイッチを入れるためにたびたびの
授乳は役立ちます。(乳汁生成第三期)
産後数日の間、
夜に赤ちゃんを預けると楽そうですが
赤ちゃんのいない妊娠前の体に戻っていきます。
産後すぐから赤ちゃんとともに暮らす生活をしていると
赤ちゃんがいることに慣れていく人が多い(ほとんど)です。
(これはエビデンスというよりも母子同室の産院での
お母さんの表情や言葉からの印象ですが)
→タグ「産後すぐ」「妊娠・出産」「泣く」「抱っこ」
睡眠時間は赤ちゃんを預けた人も、
一緒にいた人も同じ程度であり、
赤ちゃんは深い睡眠が,母が一緒の方が
長く取れていることは分かってきています。
(ミルクや哺乳瓶やサプリメントやお茶の宣伝のない
母乳育児についての教科書にはどれにも詳しく書いてあります)
産後3-4日目からの母子同室の施設が多いのですが
産後、時間をおいてからの母子同室の方が
気持ち的に緊張していたり
(緊張するくらい余裕が戻ったとも言えるのですが)、
母乳が出始めるのが遅れてたり、
おっぱいがパンパンに張っていたりして授乳そのものも
難しくなっていることも多いです。
なので、
生む前にいつから赤ちゃんが一緒にいられるか
知っておくと役に立ちます。
母乳を最低限の痛みで沢山だしたいならば
産後すぐの母子同室が健康に生まれた満期産の子ならば
非常に大切な役割を果たします。
お産の施設が少なくなった最近では
産後の母子同室が出来ない施設しか選べない事もあります。
その時は目が覚める度に痛くない程度に
軽く搾乳の手技をしておくと,痛みや母乳の量の
問題を減らします。
沢山母乳がでていなくても良いのです。
母乳が沢山出始めるのはよく出る人でも
2-3日はかかるのがほとんどですし、
最初1週間くらいは数滴しか出ない人もめずらしくないです。
出る量が少なくて,母子同室でもないときも
2-4時間毎には少しずつ搾乳して、
赤ちゃんの授乳時間に授乳室に行ったときには
上手く飲ませる事以上に,しっかりハグして
赤ちゃんを見つめることもお忘れ無く。
→搾乳についてはうちのブログはタグ「双子」に
まとめてあります。
哺乳瓶に慣れた子だと、ママの乳首に戸惑う子も
出て来ます。
一緒にいる時間が長くなっていくうちに、
この時間は何をしても泣くとか、
こんな風に泣いた後はしばらく寝るとかという
赤ちゃんの生活のクセのようなものを把握している事は
よく認められます。
初産のお母さんが「この子、この泣き方をしたら
しばらくは泣くと思うよ」と退院の時点で、
おばあちゃんに説明しているのも、
母子同室の産院ではよく見かける光景です。
放っておいて良いシーンと、
きっちり関わって上げた方が良いシーンの答えはないです。
それを読みとれなくていっぱい一杯になっているときは
乳汁生成のペースがある程度一定に達した時期になれば
数時間はおばあちゃんが夫に赤ちゃんを預けて
カフェにお茶を飲みに行ったり,寝たりすることは
人間なのでどうしても必要でもあります。
どうすればそういう休憩を可能に出来るのか、
赤ちゃんが生まれる前に検討しておくと
ママのお休みが少しはとりやすくなることでしょう。
(2-3時間だとミルクは大抵不要ですが
搾乳を冷蔵庫に置いておけたらそれも使えます。
ミルクを使うことは出来るのですが、
その後、母乳のでる量や授乳の痛みに関わることがあるので
あらかじめ,どのようにお出かけするかを
専門家に相談しておいても良いかもしれません)
「母乳パッドが案外痛い」
→ガーゼのハンカチやタオルが案外痛くありません。
母乳パッドは繊維が固いのでハンカチと服の間に入れて
肌に触れない使い方に留めるのもひとつの方法です。
「離乳食は10倍粥から」
→10倍粥つまり重湯程度のものだと、水分が多すぎて
母乳を飲む量が減る割に,栄養がむしろ不足することがあります。
離乳食(WHOでは補完食と言います)を始めるときは
母乳だけでは足らないものを足していきながら、
長く授乳出来るように気をつける事が出来ます。
→タグ「卒乳」「成長」
最近は赤ちゃん主導の補完食という考えも出て来ています。
イギリスなどでは色々なサイトもあります。
残念ながら、
赤ちゃん主導の補完食について詳しく書いた記事は
当ブログにはまだ投稿したことはないです。
まだまだあるかもしれません。
あらかじめ知っていても辛いこともある事でしょう。
でも、知っていると乗り越え易いことも沢山あります。
赤ちゃんが産まれる前に,これらのことに少し、
触れてからお産していけるよう願っております。
記事や写真・イラストの無断転載はお断りします
医療的な事を扱うため個々の症例の質問への回答は
責任を持てないため、基本的に行っておりません。
←バナーを作って貰いました(*^o^*)
2-3年以上前の記事では内容がすでに古い可能性があります。 改訂などの管理が行き届いていないこともありますので 記事の公開時期にもご注意下さい。
about me: 坂出市立病院 産婦人科勤務
(産婦人科医・外来のみ、H27年5月より)
2017年5月28日(日)に高松社会福祉総合センターで第二回目の四国母乳育児を学ぶ会は盛況に終わりました。みなさまのご協力に感謝します。