牛乳の話
2006年 07月 08日
私の祖母は存命のころには藁葺き屋根の江戸時代に建てられた建物に、乳牛達と一緒に寝起きしていました。祖母の寝室の一番近くには、たいていは赤ちゃん牛がいたように記憶しています。なので、母の実家に帰ると搾りたての牛乳を鍋で温めただけのバターの匂いのするふわっと甘いのを飲むのが楽しみでした。牛乳は嫌いだったのにも関わらず。です。
赤ちゃんに母乳の他に上げる人工乳(補完食、と言う言葉を母乳支援をしている私たちは使います)の原料は、牛乳です。私も、最初、それを知ったときに「?」と感じたのです。何かもっと素晴らしいものが原料なのではないか、と。でも、牛乳が原料なのです。牛は草食動物で、赤ちゃん牛はとにかく大きく育たないといけないので筋肉や骨が育つことが大切になります。一方、人間の赤ちゃんはカロリーをどんどん使う「脳」と言う組織を育てる事が必要です。育てるものが違い、消化能力が違うために、牛乳を加工してさまざまな添加物を加える事で人工乳が出来ます。乳業メーカーさんが、どれほど母乳の成分を研究して赤ちゃんの身体にふさわしい製品を安定供給するために気を配っているか、と言う事に関してはよく頑張っていると思います。だから、母乳分泌の少ないママが、お薬のように気をつけて飲ませる人工乳については、昔のように重湯やコンデンスミルクを飲ませていたよりはうんと安全になりました。でも、成分は「牛乳」なのです。
また、一方で北海道では生産しすぎた牛乳が余って酪農家に大きな打撃をくわえていると言います。余ったミルクを、スキムミルクにして食料難に悩む国に援助しようとして、援助を受ける国から「きれいな水もないのに、粉ミルクをもらっても困る」と拒否されたと言う話も読んだ記憶が有ります。そう言う政治や経済の話が赤ちゃんの口に入るものに影響する事はないくらいに、乳業メーカーさんは倫理的な仕事をしている、と信じたいと思います。
トラックバックした記事に戻ります。商用牛乳にはホルモン作用があり、ラットの生殖器に影響したと言う山梨大学佐藤章夫氏の研究が紹介されていました。ラットだから人間には関係ないのか、それともラットも人間も同じほ乳類として、考慮していくのかはこれから、研究が進むものかもしれません。
牛乳に限らず、普段口にするものはゆっくりと血になり肉になっていくものです。で、血になり肉になったものが、健康的なものなのか健康に問題を与えるものかの結果が分かるまでに長い時間がかかる事が有ります。新しい情報も大切ですが、やはり、「あれ?これでいいのかしら?」と本能的に感じる事に対しては、よく注意を払い自分や赤ちゃんの身体を観察していく必要が有るのだと思います。
きちんと気をつけて妊娠出産産褥の時間を過ごしていくと、母乳分泌の足りない人は1割弱です。それも、小児科の先生や保健師さんが体重増加に多くを期待しすぎずに一日に18〜20gの体重増加が有れば大丈夫!と、言う目で支援をしていましたらもっと少ない数になります。残念ながら今の日本の母乳率は一ヶ月健診で4〜5割と言うのが現状です。どうしてこの大きな差が出ているのか、スタッフサイドもママやパパも意識している必要が有るように考えられます。たとえば、その中には、牛乳を提供している牛の健康状態はどんなものか、と言うものに対するアンテナも必要となることでしょう。
人工乳が悪い、とか、牛乳が悪い、とかと言うのでなくて、身体の仕組みに添った食事はどういうものがいいのかをコツコツと観察していく必要が有るのだと思います。 そうすると、じゃあ、求める「健康」とはどんな状態なのか、と言う事も考える必要が生まれてきます。時代が勝ち得た便利さと、身体の自然なありようと、そのバランスを取っていくのに私たちが見落としている事は案外多いかもしれません。だからといって萎縮するのでは本末転倒とも言えるのですが。。。
健やかな身体でいるためには、何が必要なのか。
案外、昔の人間の暮らしにもヒントは有るかもしれません。
母乳で育てると、育っていると感じるのはそうだと思ってしまいました。
吸う力が強くなってきたり、おっぱいが良く出るようになったり、互いに変化していることを実感できます。離乳食をしっかり食べてくれる今でも、やっぱりおっぱいはかかしません。気持ちがつながれるから。飲み終わった後の満足そうな顔。
でも、ミルクもあげています。始まりは、夜寝かすためだったように思います。自分の精神的なバランスのために睡眠が必要でした。育児に手助けがあれば、とよく言いますが、今の家族環境では望めないことです。現実として、泣き止まない子を抱えて、途方もなく自信がなくなって泣くという事をみんな経験していると思います。
すがる先が、家族ではなくてミルクだなんて…。
いろいろなことを知って育てていかなくてはいけないとも思いますが、もっと前にせっぱつまったことが育児にはあったりします。
ぬくもりのために、これからも母乳を楽しみたいと思います。
リンク、ありがとうございます。
>ぬくもりのために
まさに、その通りなのでしょうね。
かけがえのない毎日を重ねている事が伝わってきます。
また、昔のような大家族でなくなった今の時代、
お友達や近所の人を家族のように考えていくことも、
一つの答えになるかもしれません。
途方に暮れてミルクに答えを見つけたのは必死な思いからだったことでしょう。
(母乳の仕組みとして「吸った分だけ産生され」ます。
赤ちゃんの事をとても観察されているので、
kamekameekkoさまは、ミルクの上げすぎにならないよう、
気をつける事が出来ると思います)
参考になるかどうか分かりませんが、
ラ・レーチェリーグ(国際的な母乳育児支援のボランティア団体)では、
おっぱいライフの為の学習会などもあります。
もし、ご近所にリーダーさんがいらっしゃったら、
そういうものへの参加もお友達を増やすチャンスとなるかもしれません。
ステキなおっぱいライフを長く楽しめますように。
牛乳についてはいろんなコメントがあり、一般の私みたいな消費者は??と思ったりです。
ただ「良くない」という意見も多いのには最初は驚きました。
私個人としましては「必需品」じゃないことは確かと思います。
そしておっしゃってますように、昔の人の暮らしって参考なると思いますね。
コメントありがとうございます。
牛乳は、美味しいものは本当に美味しいですよね。
アイスクリームも牛乳から作られるし、
コーンスープも牛乳が入らないのは寂しい味がします。
でも、じゃあ、その牛がどのような環境で、
自然ではあり得ない大量の牛乳を提供しているのか、と言うところに、
私は、お母様に安全な人工乳をお奨め出来るように、
注目しています。
必需品でないけど、美味しいもの。
それを健康的に楽しむにはどうするか、と言う事でも有るのかもしれません。