ATL(HTLV-1)陽性のお母様と母乳育児
2008年 05月 12日
もしかしたら将来的に白血病を発症するかもしれないウイルスを持っていることを知ったお母様の受けた衝撃をまずは受け止めることが必要になりますが、その後、このウイルスが子供にもうつる可能性のお話も必要となります。
急いで書いていてきちんと論文を読んで書いていませんので、それぞれの文献も参考にして頂きたいという前提で、お読みくださいね。
国立感染症研究所 感染症情報センター 「成人T細胞白血病」のところに、その病気の詳しい説明と感染経路のお話が載っています。(感染症対策としての解説であり、この解説を書いていらっしゃる先生は、あくまでも母乳からうつるのだから母乳は止めるべきだ、という考えで書かれていることをお断りしておきます)
現在、感染を防ぐための考えとして、
◇母乳からうつるから母乳を止めるべき(母乳育児のRiordanの教科
書でも、母乳育児禁忌の原因のひとつとされています)
という考えが以前から有りました。
今、育児母乳哺育による利点が研究されてくるにつけ、お母様やお父様たちが何が自分の子供の健康にとって大切なことであるかを選択する必要が有るという考えが、私たち母乳育児を支援してきているスタッフや母親から生まれてきました。
人工乳のみを与えてもATLの感染率は下がっても決して0%とならないこと。日本のような衛生状態のいい国でも母乳にしか入っていない成分(リンパ球、抗体、ホルモン、酵素など)の入っていない人工乳が児の健康に本当に問題がないのかは、今のところ、きちんとした研究はなされていない、つまり人工乳自体が母乳と決して同等の安全性を持っているわけでないこと派、意外と知られていません。なぜWHOの「母乳代用品の販売流通に関する国際規準」(最新のものでは有りませんが、、)などで人工乳の販売に対する規制が必要とされているか、を気にかけていらっしゃらないのは、まだまだ医療の専門のスタッフの中にも多いのが現状です。
母乳育児もしながら最低のATLに対する感染率にする方法はないのかということも考えられて以下の方法を選択することもなされてきています。
◇ウイルスを死滅させた母乳( -20℃12時間凍結又は56℃30分加温)を使う
◇短期間(3−6か月)の授乳
などの方法がそれに当たります。
先の国立感染症研究所の長崎県の研究に基づいた文献から引用しますと、
長崎の観察では、短期母乳哺育群の11.4%(4/35)は、人工哺育群の3.2%に比較して有意に高く(P=0.032)
と書かれています。これを人工乳を飲ませたら97%は感染しませんが、短期でも母乳をあげた場合は89%が感染をしません。と読むことも出来ますね。
鹿児島県での抗体陽性率は、
人工乳群で4.98%、短期母乳群で1.52%、長期母乳群で22.2%、不明群で5.59%鹿児島ATL制圧委員会、鹿児島県保健福祉部:鹿児島ATL制圧10カ年計画報告書、平成18年12月という結果が出ています。
つまりこのデータでは、短期母乳群での感染が、むしろ人工乳群より低い結果になっています。
全く母乳をあげなくても感染する可能性が有るならばATL以外の中耳炎や肺炎などの感染症になりにくく、生活習慣病の予防効果を持ち、脳の発達に必要で、母子関係形成にプラスの影響を与える母乳の利点を赤ちゃんに届けたいという考えは、少しでも感染の可能性が下げられるならばATL感染の辛さから赤ちゃんを守るために人工乳で子供を育てたいというお母様の考えと、子供に対する愛情は同じと考えても良いのではないでしょうか。
もちろん、感染の危険性や母乳育児による利点という情報を提供した上ではありますが。
まだまだ、この病気の決定的な治療薬もワクチンも開発されていません。ですから感染させないことはとても大切な考えです。
ただ同時に、人工乳と母乳が同等ではない現実も、実は今まで考えられていた以上にこどもの将来の健康に関係することがわかってきました。母乳育児に生活習慣病の予防効果がわずかながらあることも踏まえることは、かえって母乳か人工乳かの選択を困難にするかもしれません。でも、あくまでも、それぞれのご両親が満足して育児をするためには、むずかしい問題であればこそ、納得出来る選択をすることを応援していくことが望まれているのではないでしょうか。
こうすればいい!という単純で分かりやすい回答でなくて申し訳有りません。
なお、HIVの感染は発展途上国などの抗ウイルス薬が十分に手に入らない地域では授乳は禁忌とはされていません。そういう国での研究で、混合栄養では完全母乳群よりも感染が高かったというようなHigh uptake of exclusive breastfeeding and reduced early post-natal HIV transmission.(Kuhn L, Sinkala M, Kankasa C, Semrau K, Kasonde P, Scott N, Mwiya M, Vwalika C, Walter J, Tsai WY, Aldrovandi GM, Thea DM.)という研究もあることは、混合栄養と免疫とになにかしらかの関係を示している可能性が考えられるかと思われます。
キャリアといわれて、母乳をあげる・あげないはお母さん・お父さんが判断すればいいことと思います。
患者として言わせていただければ、母を恨んだこともありました。
その母も祖母からの感染でした。祖母を恨みもしました。
自分から連れ合いに感染させてしまいました。(そのときはキャリアとは
知りませんでした。)
子供へは感染させないようミルクで育てました。
いまはただ、子供たちが成人するまではという思いです。
お久しぶりです。以前のコメントより先に、
こっちにお返事ですm(_ _)m
ATLはIBCLCの母乳育児カンファレンスの
今年のテーマだったんです。
松本、どうやって行こうか途方に暮れています。
情報ありがとうございます。
あずさ二号〜〜φ(._.)メモメモ、、、
ですが、あずさ二号までの距離も遠い〜〜(;_;)
忙しくてpeerも、目を通していないので、
講義はとても楽しみです(*^^*)是非、お会いしましょう。