「ミルクを足しなさい!」。。。乳児健診で

タイトルのセリフは残念ですが、まだ、言われているんですね。
それも、母乳が出ているかどうかのチェックもないままに。



赤ちゃんの体重の増え方が少ない。
きっと、口に入るものが足りていない。


私も、確かにそう考えます。
ただ私は産科医なので乳児健診をする事はありません。
でも「ミルクを足しなさい!」と言う前に、
確認できることがあると信じています。



つまり、、、

母乳が本当に出ていないのか?
出ているけれども飲んでいるのか?


の、確認がまず大切になるはずだ、という立場です。





お産から3−4か月を過ぎてくると、
ママの身体も、母乳分泌はオートクリンコントロールになります。
※:オートクリンコントロールとは、
 ホルモン(プロラクチン)の働きだけでなくて、
 赤ちゃんがおっぱいをくわえる刺激も母乳を作るということです。

ぱんぱんに溜まっている母乳を出すのではないので、
確かに出しかたにコツがあるのですが、それを知らないと、
「搾っても出ませんでした」と
ママは(もしかして小児科の先生も?)判断してしまうわけです。

残念ながら医療・保健スタッフも、
出ている母乳を手では絞りだせない人は少なくないのですが、、、
ちょっとしたコツを知っていれば誰にでも確認出来ます。

お仕事を始めるに当たって、冷凍母乳を作るための情報などは、
母乳の搾りかたのコツを学ぶのに良い資料になるかと思います。
(メディカ出版刊行の、ラ・レーチェ・リーグの
 「改訂版だれでもできる母乳育児」などに詳しいです)



出ていないならば、どうやって分泌を増やすのか?
に、目をつけて行きます。

災害時の母乳育児支援についてのJALCの、
http://www.jalc-net.jp/hisai/hisai_support.html
(↑リンク切れ、訂正:H26/5/4)
のQ&Aにも、母乳を増やすためのコツが書かれています。

基本は「母乳は飲めば飲むほど、搾れば搾るほど分泌が増える」
と言う性格があるところにあります。
赤ちゃんがイヤがらずに飲んでくれるならば、
何度も何度も欲しがるだけ授乳する事が大切になります。




さて、その前に出ているけれども飲んでいるのか?も、
確認が必要になります。
つまりポジショニングとラッチオンがズレていないか、ということです。
 
生まれてすぐの3kg前後の赤ちゃんと、
3か月健診または6か月健診の赤ちゃんと体重は全然違いますよね。

でも、うまく授乳出来る「感覚」たとえば、
引き寄せる力だったり、姿勢だったりを、新生児の時に、
教えてもらったままで続けているママは少なくありません。

赤ちゃんが身体をねじって乳首の先だけをチュクチュク飲んでいるのです。
乳首の痛みも「お母さんなんだもん、我慢しなくっちゃ」と、
ママ達は、気にかけていない事も多いです。

赤ちゃんの身体がまっすぐで、少し上を向く姿勢だといい感じです。
ママと赤ちゃんとのお腹は密着しているでしょうか?
赤ちゃんの下あごは乳房に埋もれるくらいくっついているでしょうか?

↑に書いた「母乳分泌を増やす」必要のあるママよりも、
このポジショニングとラッチオンを改善して、
授乳回数を赤ちゃんが欲しがるたびにあげるようにして行く事だけで
体重が程よく増えだす赤ちゃんが結構多いのです。
(それにもかかわらず、小児科の先生によっては残念ながら
 「母乳が足りません。授乳回数を減らしてミルクを増やしなさい」
 という極端な指導をする方も、今もいらっしゃるかもしれません)






もちろん例外はあります。
極端な低栄養(普通に育児をしていたら考えにくいのだけど)や、
見るからに何かの疾患を疑う場合もあるかと思うのですが、、、
希望としては、小児科の先生にそここそを見分けて欲しい。

ミルクを足すのを7日ほど待つなんてできない緊急事態なのか、
それとも、もう1回、飲み方を気をつけて、
近いうちに体重をチェックするくらい時間に余裕の在る子なのか。

それを見抜いて頂けるとママの育児不安は随分と解消します!と
健診をしない立場の産科医が言っても、説得力はないでしょうか。




健康な赤ちゃんが、母乳が足りなくて飢えかけていて、
ご機嫌でニコニコ笑ったり、お遊びを覚えたり、するのでしょうか。

赤ちゃんくらいの、本能と知恵があれば、
極度にひもじければ、
出来るだけじっとしてエネルギーを消費しないようにしたり、
必死に母乳を求めたりするはずです。

ぐたっとしているのは異常です。ぐずるのが続くのも心配です。
その時は、このブログに書いている事は参考にしても構いませんが、
すぐに小児科の先生の指示に従ってくださいね。






でも、「ミルクを足しなさい!」と言われた赤ちゃんの多くは、
しっかりアイコンタクトが取れて、抱き上げるとニコッと
特上の笑顔を見せてくれて、初めて見る診察室に、
興味津々、ワクワクドキドキと、キョロキョロしている事は
少なくありません。そして、ママと言葉にならない言葉で、
上手にお話ししている事すらあります。

とても、生死をさまよう瀕死の赤ちゃんには見えないのに、
「すぐにミルクを足しなさい(`皿´)」といわれたら、
今までの育児の頑張りすら否定されるように悲しく感じる、
そういう責任感の強いママも沢山います。

恐らく、小児科の先生でこのハグブログを見てくれる先生は、
そういう事をご存知の先生なので、
そのような先生が増えてくれる事を願っております。



そして、「ミルクが当たり前で母乳が特別」な今の時代に、
一生懸命おっぱいライフを続けているママやパパは、
本当に貴重な毎日を生きています。
どうか自信を持って、我が子を慈しんであげてくださいね。





↓終了情報
最後に、、、これはママに、でなくて、ドクターへの情報提供です。
JALC
医師のためのセミナーの事前申し込みは10月25日までです
埼玉県で11月の勤労感謝の連休に、
JALCが総力を上げたセミナーを準備しています。

母乳は野蛮な恥ずべきものなのか、
どのような根拠で、大切にすべきものなのか、
どうか肌で感じて頂けたら、と思っております

Commented by いちご at 2008-10-19 15:29 x
まさに長男の三ヶ月検診の時これでした。私は混合からミルクを削っていた最中でいつかミルクを辞めようと頻回授乳に明け暮れていました。退院時より二倍以上増えておりましたが、授乳回数を聞かれ30から1時間おきと言うと母乳が足りてない体重が増えない病気カモ、ミルクを制限なくあげてと言われかなりショックでした。増えとるやん!の反論もできずその指示で1ヶ月後にきてと言われ、1ヶ月後、パンパんの不細工に肥ったわが子に愕然としました。ドクター「体重増えたね~、はい、いいですよー。」え・それだけかい?あ~もっと自分と赤ちゃんしんじればよかったなー。先輩ドクターには難しいかもですが、友達や後輩のたくさんの先生方におっぱい育児のことレクチャーしてほしいです。
Commented by shima at 2008-10-26 17:15 x
はじめまして。こっそりお邪魔しては頷いたりうなったりと大変勉強にさせていただいております、shimaと申します。
私は都内のクリニックで働く看護師なのですが、双子を出産してからは母乳育児を支援することをメインにしております。
大半は乳児健診でお目にかかるママと赤ちゃんのご相談に乗らせていただいておりますが、6か月健診以降に行政から委託された健診があるものですから、新生児訪問や3,4ヶ月健診で「ミルク足しなさい」「体重の増えが悪い」といわれておいでの方がたくさんいらっしゃいます。

でも、大概(いえ、全員)どの子も少々小ぶりでも成長曲線はきれいなカーブを描いていて、しかも先生の言われるように、みんな元気で、活発で表情がよくて、肌がぴんと張ったよい血色です。

ミルクを足して、といわれる前にラッチオンとポジショニングを今一度確かめていただくとか、前乳と後乳のことと合わせて授乳の時間を区切らないことなどと伝えて欲しい…と切実に思います。
Commented by Dr-bewithyou at 2008-11-05 21:26
いちごさま>
コメント、ありがとうございます。

30分から1時間での授乳をしていた努力が伝わらないのは、
悲しいですよね。
自分と赤ちゃんを信じるのに、案外と大切な力は、
お祖母ちゃんやひいばあちゃんの
「そんなものよ」という言葉でしょうか。

小児科の先生がミルク育児された赤ちゃんを「スタンダード」と思い、
お祖母ちゃんの当たり前もミルク育児した子なのが今の時代です。

一生懸命おっぱいをあげた事を、どうか誇ってくださいね。
Commented by Dr-bewithyou at 2008-11-05 21:33
shimamさま>
こっそりのご訪問(*^^*)、ありがとうございます。

shimaさまのように、お勉強を重ねながら、
おっぱいライフを支援する人たちがいることはママ達の
安心にきっと役立っている事でしょうね。

母乳をあげる事があまりに「当たり前」すぎて、
授乳のためにも技術や知識が必要なことも、
「当たり前なのだから技術や知識は要るはずがない」と
思われているのでしょうね。

小児科の先生を納得させて安心させる、
そのようなデータも出して行く必要があるのだろうなあ、とも、
思っているところです。
・・・まだまだ、いろいろと難しいですね。
Commented by カナコ at 2008-11-28 18:34 x
はじめまして。ちょうど今日、4ヶ月検診で体重の増えがあまりよくなく、不安になっていろいろ調べている時にこのブログを見つけました。 ホッとしました。

ちょうどラレーチェリーグの本も手元にありますし、もう一度読み返しつつ、このまま母乳でがんばってみようかと思います。
事後報告で申し訳ありませんが、たくさんの人に知ってもらいたくて私のブログにリンクを貼らせていただきました。よろしくお願いします。
Commented by Dr-bewithyou at 2008-11-30 17:49
カナコさま>
はじめまして。
コメントとリンクをありがとうございます(*^^*)

母乳の出方は、それぞれ決まっている量しか出ない、と、
思っている方が多いのですが、授乳回数をふやすと、
健康で特に問題を持たないお母様では
必ず分泌量が増える性格を持っているようです。

カナコさまでの詳しいことは分からないのですが、
小児科の先生は次の検診の時に体重が増えていたら
その増えた理由はあまり気になさらない先生が多いようです。


小児科の先生に言われた通りにするのが一番簡単で一番安心ですが、
それを理解した上で赤ちゃんにもっと良い答えがあるはず!、と、
思って行動するお母様がいることが
小児科の先生の心に届いて行って欲しいと願っています。

老婆心ながら、小さめで健康な赤ちゃんがほとんどですが、
問題がないことを確認するのに、次の検診まで待たずに、
二三週間くらいで一度体重のチェックをしておくと、
より安心出来るでしょうね。
(この時期には一日20g位の増加に落ち着いていることが多いようです)

どうか、お子様を自信を持って育てることが出来ますように。
Commented by 展代 at 2014-05-04 23:41 x
追伸 まさにこの状態です!!何の確認もせずに印籠渡された感じでした! 母と「本当に足りてないなら泣くよねぇ」と、機嫌よく愛想笑いする赤ちゃんを見ながら話していました。ただ父や旦那は「やっぱり!ミルク飲ませろ、成長に影響する!」なんて騒いでます。確かに私の無駄な頑固?エゴ?で母乳のみにこだわったばかりに背が低い男になるのも可哀想…いろいろ考えてしまいます。何度も申し訳ない。またご助言下さい。
Commented by Dr-bewithyou at 2014-05-06 18:19
展代さま>
沢山の記事を参考にして下さってありがとうございます。文字数が多いのでお疲れになりませんでしたか?(^◇^;)

足りていないと、泣くよりも省エネモードで、出来るだけ泣いたり動いたりの活動を抑える子もいるので、脱水やお熱には注意が必要な事も有ります。もっとも、そういう極端なことを情報提供しましたが、展代さまの赤ちゃんは成長曲線の中に入っているのですよね。目を合わせて情報提供しているわけではありませんので、念のため、書かせていただきました。

つづく
Commented by Dr-bewithyou at 2014-05-06 18:21
つづき ここで、一つ、軽い冗談を良いですか? 母乳育児推進の小児科医の言葉です。
「奥さん、あなたは、ダイエットでいつも痩せようとしていませんか? なのに、どうして赤ちゃんはどんどん太り続けないといけないのですか?」

栄養の難しい所は、まだ、「これがラストアンサー!」という方法が決定されていない部分もある所です。足りないのは困るし、多すぎて肥満になるのも困るものです。母乳は出した分しか出ませんので、ミルクをあげすぎると飲む量が減って、作る量が減る事があります。ご機嫌で元気にしているお子さんが、切羽詰まった栄養失調である可能性は低いのですが、1-2週間後に体重チェックをする事もご提案しておきたいと思います。

ご主人さんやお父さまに、母乳がどのようなものなか説明するのに、ラ・レーチェ・リーグのインフォメーションシートがあります。 http://www.llljapan.org/binfo/infosheet.html プリントアウトは出来ないですが、シートを購入することが出来ますので、ご参考になさってみて下さいね。

展代さまにとって、赤ちゃんがとても大切なものであることが伝わってきました。幸せなおっぱいライフを築いていけますように。
Commented by 展代 at 2014-05-06 22:29 x
連日返信ありがとうございました。体重はもちろん成長曲線内で、おしっこもたくさん出ています。
省エネモードで指しゃぶりはあまりに可哀想なので、まめに体重測定しますね。
自分で出てないな~と感じるので、その時はミルクに頼ることします。
参考文献お知らせくださりありがとうございます。家族で育児、顔張ります。
Commented by Dr-bewithyou at 2014-05-10 08:55
展代さま>
まだまだ母乳だけで育った子を沢山見たことのない専門家が多い世の中です。
母乳が出ていても飲まない子もいるし、
本当に少量しか出ていない母乳が回数や飲み方でどんどん増える事も有るし、
そういう情報を母子保健医療従事者が共有し切れていないために、
展代さまのような悩みを持つ人が少なくないです。

少しずつ、赤ちゃんの身体のこと、栄養の事が解明されつつあります。
そんな中で、子供がご機嫌で、寝たり泣いたりメリハリのある生活をしてて、
排尿の量が保たれているときには、緊急の対応は不要です。

それに6か月前後から補完食(いわゆる離乳食)を始める頃には、
母乳不足がある場合、子供が、食べ物をどんどん食べてくれるようになる事が多いです。

文字だけですので、私が気づかないこともあります。
不安なときは、やはり母乳に理解がなくても子供の専門家である小児科医に、
赤ちゃんの健康を確認して貰ってくださいね。

Commented by 展代 at 2014-06-15 00:09 x
先月はいろいろと相談にのってくださり、ありがとうございました。
授乳回数を1日7回~8回、時計より我が子をよく見て欲しがるだけのませたところ、6月11日の健診で平均ど真ん中に戻りました。完母ですが身長とのバランスも問題ないでしょうと保育士さんから言われ安心しています。離乳食も始め、小さじ1程度食べてくれます。この調子で母乳続く限り、適度に頑張ります。ここで相談してよかったです。ありがとうございました。
Commented by Dr-bewithyou at 2014-06-15 20:39
展代さま>
「ミルクを足しなさい」と言われて、母乳が足りているかどうか、気を遣う数週間だったことでしょうね。
体重が増えていたとのご報告、ありがとうございます。

離乳食もお匙から滑り落ちないくらいの、
とろみがあるものの方が安心です。
お匙から滑り落ちるくらいだと水ばかりで、
口に入るカロリーは低いからです。

http://smilehug.exblog.jp/10224546/
で、WHOの資料の入手方法を書いてあります。
参照なさってみてくださいね。
by Dr-bewithyou | 2008-10-19 10:44 | 問題発生 | Comments(13)

赤ちゃんとのつきあい方の情報メモ。母乳育児支援(おっぱいライフ応援)をしている産婦人科医・IBCLC 戸田千のブログです♪ 下方の「ブログの説明」に利用上の注意もありますので必ずご覧になってください。


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